『てるてるあした』 加納 朋子 著評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆(星9個)
あらすじ
主人公の照代は、どうしようもない親の借金のせいで高校進学が出来ずに、佐々良(ささら)という町で遠い縁の久代というおばあさんの家に住むことに。その町で不思議なことがたくさん起こる。家に出る女の子の幽霊、あて先不明のメール、未来が予言できる女子高生など。照代はささらという町と人を通じて、成長していく。久代さんの内面とは?親というものは?そしてその親を見る子供は?
様々な角度から人を描き、ささらという町の雰囲気を作り出す文章に載せられた、人を感じるストーリー。
※この作品は『ささら さや』という小説にも関連しています。
書評
とても心が温まるストーリーでした。一見、とても不幸に思える主人公もあまりそういう風には思えませんでした。
それはささらという町を舞台にしているから?
町の時間の流れがとても凪いでいる感じで、ほんわかしていました。
田舎の設定だからだろうか。出てくるキャラもそれぞれ事情がありながらもとても好感の持てる人ばかりでした。
そんな人たちに囲まれている主人公の照代が幸せに見えたのかもしれません。
この作品には親と子をテーマにしています。照代と久代の関係も、親子ではないにしても、やっぱり親と子の関係を感じます。
その点でよかったのは、やはり親子の成長でしょう。親が子を育てるだけでなく、それによって親も弱さを見せ、成長していく姿がありました。照代のどうしようもない親も同様にです。
今回はミステリではないと思います。広義的にみても。
しかし、とても心温まるいい作品でした。照代の視点から描かれる文章は、大人の自分からしてみれば、子供の視点が新鮮であり、懐かしくもあったのだと思います。
湯本 香樹実氏の『夏の庭』や吉本ばなな氏を好きな方はお奨めしたいと思います。
※ちなみに僕は、前作の『ささら さや』は未読です。あまり関係なく楽しめますよ。舞台が同じで、少し関連している程度です。前作の主人公のさやさんも出ています。とても魅力的なキャラで。
僕の一番の好みです(笑)
『掌の中の小鳥』 加納 朋子 著評価 8.5(十段階)
あらすじ
偶然を引き寄せて出会った男女の身の回りに起こる日常的な謎をめぐるストーリー。
偶々?入った店「エッグスタンド」で、様々な話が展開される。なんでもないことが結びつき
一つのストーリーを浮かび上がってくる。一見クールに見える男と勝気で強い女の周りで女心を描き、男のプライドが見え隠れする謎が展開される。非常に人間的な青春ラブストーリー!
恋愛を根底にしながらも、それぞれ関連性を持ったバラエティ豊かな五作が詰まった連作短編集。
この本を初めて読んだとき、とても新鮮でした。女性作家が書く女性像がこんなにもリアルに
書かれているとは、思いませんでした。偏見があるかもしれませんが、男性作家の本に出てくる女性が男の願望に満ちた女性像になっているように思えます。美人でスマートで少し怪しさがあり、ミステリアスな雰囲気を持っているような感じです。
しかし、ここに出てくる女性は非常に現実味を帯びた女性です。だからといって魅力に欠ける
というわけではなく、とても引き込まれます。
この部分が僕にはとても新鮮でした。女性にしか描けないキャラクターではないかと
思います。是非、男性に読んで欲しいですね。
もう一点は、ストーリー自体にあります。出てくる謎も重いものではなく、日常的で
比較的やわらかいものなので読みやすいです。すんなりと読めるのではないでしょうか。
特に三作目の自転車泥棒なんかは最後一つの物語になったときは気持ちのいい読後感が
ありました。映画になっても良さそうな雰囲気です。
これくらいの本なら、映像化してもいいと僕は思いますけどね。
ただ、少し不満を感じたのはもっと男がロマンチストであってもいいんじゃないかと
個人的に思いました。まぁ、これは僕が男だからかもしれません。

