『氷菓』 米澤 穂信 著評価 ☆☆☆☆☆☆☆ 星7個
あらすじ
常に「省エネ」をポリシーに生きる、高校生折木奉太郎は、逆らえない姉の言いつけで廃部寸前の古典部に入る。その部室にいたのは豪農で知られる家柄の千反田える。そのえるからもたらされた謎を、折木は解くことになる。悪友福部里志と毒舌伊原摩耶花と共に、日常起こる謎を解いていく。毎週金曜日に借りて返される本の理由は?部室を締めたのは誰?古典部の文集「氷菓」にまつわる謎。など日常に起こる謎を奉太郎が仲間と共に解いていく青春ミステリ!!
第5回角川学園小説大賞のミステリー&ホラー奨励賞受賞作。米澤氏のデビュー作。
書評
もともと角川スニーカー文庫から出された作品です。僕が手に入れたのは角川文庫からです。最近に北村薫氏の円紫さんシリーズを読んでいたので、殺人が起こらないミステリは抵抗なかったのですが、やはり時代の差を感じましたね。
古典部のキャラクターはとてもゲーム性に富んだ性格になっています。ライトノベル出身だけあって、その感じが出ています。読んだ方の中には、こんな高校生はいないと言われる方もおられるかもしれません。(それがリアルではないと僕は思いません)
ただ、ここで言いたいのはこのキャラ付けは決して装飾だけではありません。話の根幹にしっかりと根付いています。主人公奉太郎は探偵役。ヒロイン千反田えるは事件の謎をもってくる役。福部は情報収集役。伊原は謎を持ってくる券行動役。といった風にしっかりとキャラが生かされています。
このキャラは自分に合わなくても、しっかりと根付いているのでストーリーが気に入れば、次第に気に入ってくるかも。
で、内容ですが前半の謎は少し物足りないものかもしれません。しかし連作になっているので最後の章にもしっかりと関わってくるので、最後まで読めると思います。殺人が起きなくても、魅力的な謎はあるというものを見せ付ける本だと思います。
特に最後の氷菓にまつわるエピソードはとても魅力的な話になっています。段々と盛り上がってくる構成ですね。
少し、不満な点を挙げるとこの本は古典部シリーズの紹介になっているという点でしょうか。最初の部分などはキャラクターがどんなものなのか?という部分を説明するために用意された話という感が否めないです。その分、内容的に物足りないことがあるかもしれません。
もう一つは伏線の使い方でしょうか。別に不満があるわけではなく、例えば伊坂氏の「ギャング」なんかと比べると技術的にまだまだな点があると思います。もっと伏線をうまく使えれば、全体を通して底上げできるのではないかと思いました。まぁ言うだけなら簡単な話なのですが。
少し補足。これ以後の作品を読むと伏線ももっとうまく使われています。やはりデビュー作といったところでしょうか。「小市民」シリーズなんかはとてもうまく伏線を使っています。
最後に。もしこのシリーズが気に入れば、次の『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』と続くので是非読んでください。もっと気に入るはずです。深く深く面白くなっていくので。
評価としては途中までは星5個でしたが、最後に盛り上がったので星7個で。
ところで古典部って何をするの?と疑問がありました。しかしこのシリーズ3作を読んでこの謎を解くのが古典部の活動かなと思いました(笑)
余計なことですが、米澤氏の全作品を読んでいるのですがしっかりと実力はあると僕は思います。
米澤氏の公式サイト→ 汎夢殿
近況報告やこれからの予定などもあるので要チェックです。

