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Category 『 冲方 丁』

verocity


『マルドゥック・ヴェロシティ 1・2・3』 冲方 丁

ハヤカワ文庫JA 680.680.680円(L→R)

評価 ☆☆☆☆☆☆(星6個)

あらすじ

味方への誤爆をしたという重い過去を背負った男、ボイルド。彼は軍隊研究所に収容され改造された。その影響で眠らなくなり、訪れる幻想に悩む彼を救ったのが、良心と悩める万能兵器ネズミのウフコックであった。そして、戦争が終結した時代が訪れる。自分達はもうこの世に必要ないのか?有用性を問うため、あるいは作るために、ボイルドと同じような仲間と共にはマルドゥック市に出る。
そこでは、自分達の力を使って、事件を解決に導くという仕事があった。有用性を証明するために事件をどんどん解決していくが、そのつちにある事件にぶつかる。その事件には彼らと同じような改造された人間の集団「カトル・カール」の存在があった。彼らを雇ったバックは何なのか?様々な政治の裏側が見えてくる。やがて、それらはボイルドらを巻き込んでいく。一人ひとり失っていく仲間。そして、このマルドゥック市が抱える闇に耐えるためにボイルドは自らを絶望に追い込んでいく。その絶望への移行に障害となるのは良心のウフコック。
『マルドゥック・スクランブル』へ繋がる絶望と未来への決意が読める物語。

書評

僕はスクランブルを読んでヴェロシティを読みました。たぶんほとんどの人がこういう読み方だと思います。
ただ、個人的には読む順番は逆でも全然かまわないと思います。支障はそんなにないと思います。しかし、僕としては面白さがスクランブルのほうにあったので、ヴェロシティを読もうと思ったわけで。ヴェロシティを読んで、次のスクランブルを読まない人がいるかもと言った感じですね。

特筆すべきは、やはり文体でしょう。「―」(ダッシュ)や「/」(スラッシュ)が多用されています。例を紹介すれば

砕け散る友軍――顔見知り/友人たち。
戦争の終結/処分――無に帰す第二のキャリア。


と言った風に。他にも=などが使われています。

人によっては読みにくいし、またはスピーディに読めるということもあるかもしれません。

ストーリーのほうはというと、ボイルドとウフコックの間に何があったのかということです。スクランブルを読んでる人は結末がどんな風なのかがわかるので、読むのに抵抗があるかも。

特に真新しいものは感じませんでした。スクランブルよりも政治のやりとりなどが多いかも。ミステリ要素もあり、アクションありですが、僕はスクランブルのほうが切れていたように感じます。

スクランブルであまり見れなかったボイルドを見ることができるので、ボイルドファンには良いと思います。

また、最後のエピローグで、スクランブルに繋がっていく面白さもあったので、星6個といった感じです。

スクランブルのほうが面白かったので、比較する以上、マイナス2個にしました。で、独特の文体が僕には何の効果もなかったのでマイナス2個で評価星6個です。
scramble


『マルドゥック・スクランブル』―圧縮― 
『マルドゥック・スクランブル』―燃焼―
『マルドゥック・スクランブル』―排気―
                      著者 冲方 丁
ハヤカワ文庫JA 660.680.720円(L→R)

評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆(星八個)

あらすじ

ある一つの事件から物語は始まる。権力をもった賭博師のシェルという人物が娼婦であるバロットを爆死させようとした事件である。瀕死の状態で助かったバロットは、自分を助けてくれた人物を見る。一人は変わった髪形をしたイースター博士、もう一人は、しゃべるねずみのウフコックだった!バロットが事件の被害者となり、ウフコックとイースターが事件の担当官としてタッグを組み賭博師を追及し始める。
賭博師にはウフコックやイースターと過去因縁があるボイルドという人物が付いていた。
少女バロットを守るためにウフコックがパートナーとなる。ウフコックは自在に変形し、万能兵器になる。そして、過去にそのウフコックを濫用したボイルドが対峙する。ボイルドの能力は重力を自在に操る力。壁を自在に歩き、目の前の空間の重力を変えて、銃弾をかわす。

なぜ、私が殺されるの?自分のアイデンティティーを探し彷徨う少女
俺を必要をしてくれるのか?自らの有用性を問うねずみ
俺がおまえの有用性を証明してやる!過去に囚われた男

それぞれの思惑が錯綜し、螺旋のように絡まりあっていく!

2003年第24回SF大賞受賞

書評

三冊という壮大な量ですが、とてもスピーディに読めました。
飽きさせない展開でぐいぐい引っ張ってくれます。また、ラノベ出身ということもあってキャラも魅力的で楽しめます。
テーマは少女バロットの自分探しや兵器として作られたウフコックの自分は世に必要なのかなどの普遍的なものとなっています。
少年誌や青年誌でよく使われるテーマでもありますが、やはり王道は面白いですね。比較的若い子も楽しめるSF作品です。
また、戦闘シーンやあとで述べるカジノシーンなどのハードボイルドの要素もあるし、色々な話が最後絡まっていき、謎を解き明かすというミステリ要素もあるのでなかなか幅広く楽しめる要素がありますよ。

特色を言えば、ほぼ一冊分に渡って繰り広げられるカジノシーンです。
内容はポーカー・運命の輪(ルーレットの中で玉を回して入った場所の数字や色を賭けるやつです)・ブラックジャック。
ディーラー側とプレーヤー側の素晴らしい攻防が繰り広げられます。万能兵器であるウフコックの技術を持ってしても、相手の動きやイカサマが見抜けないディーラーなどとの一進一退の攻防が描かれています。
イメージとしては、石田衣良氏の『赤・黒』のカジノシーンを彷彿とさせますね。とても緊迫したシーンが魅力的です。

あともう一つはSF的な魅力でしょう。近未来の科学技術は事件の真相や発端に繋がっています。ここでは紹介しませんが、情報化社会の歪みなどが見えるような気がしました。そして、その科学技術がぶつかり合うバロットとウフコック対ボイルドの戦いは迫力あり、興奮するものとなっていますね。

少し、引っ掛かる点などもありますが、それ以上に魅力が溢れていますので良かったらどうぞ。

ちなみに、ウフコックとボイルドの因縁は『マルドゥック・ヴェロシティ』という題名で出ています。こちらもまた紹介します。
このスクランブルを気に入った方は、ヴェロシティへ。
6冊分も楽しめる世界となっています。

以下、単なる余談です。

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