『五人姉妹』 菅 浩江評価 ☆☆☆☆☆☆(星6個)
ハヤカワ文庫JA 700円
内容
9作の短編が収録された短編集
中には、『永遠の森 博物館惑星』のサイドストーリーとなる「お代は見てのお帰り」も収録。
SF的な科学技術が心に与える影響、そして揺れ動く感情を描いた9つの短編集
書評
『永遠の森 博物館惑星』のサイドストーリーが収録されているということで買いました。短編集ということでどうしても好みなどで好き嫌いがはっきりしてしまいますが、9つもあれば好きな作品はあると思います。
僕は、「KAIGOの夜」「箱の中の猫」「子供の領分」が気に入りましたね。他の作品も面白いですが、挙げるとするならこの3つです。
テーマとしては、未来の科学技術が生み出す、人への影響や感情を描いた物語です。クローン技術と人との摩擦がテーマとなっていたりします。そして、それらは現代の僕らとなんら変わらないテーマだったりします。いつの時代でも恋愛は同じようなものだなと思いました。
ここで、改めて菅浩江氏の小説を振り返って見ると、とても雰囲気が素晴らしいなと思います。全体的に静かな感じですね。
そして、女性特有のしっとりとした感じがたまらないです。文体を男女で分けるのは良くないかもしれませんが、やはり女性作家特有のしっとり感は男性作家にはないと思います。
そして、どこか懐かしいなと思っていたら、解説で気付きました。
解説が加納朋子氏なんです。
そうです、加納朋子氏を読んだときと同じような感覚だったんですね。この本の編集者はいいところに目を付けるなと偉そうな自分がいました笑。
ということで、加納朋子氏を好きな方にお奨めしておきます。
解説もなかなか作家らしい視点で面白かったですよ。そういう意味で星6個は厳しいかもしれませんが、良い意味で星6個なので。
「永遠の森 博物館惑星」が気に入った方は読んでみてください。
以下、雑談です。
『永遠の森 博物館惑星』 菅 浩江評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆(星八個)
ハヤカワ文庫JA 760円
あらすじ
地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館【アフロディーテ】が物語の舞台となる。そこには全世界の芸術品が収められている。そしてデータベースがあるコンピュータと脳を直接結んだ学芸員が、その機能を使って美の探求に勤しんでいた。
主人公の田代孝弘は、搬入されてくる芸術品をどこの部署に配属するかなどの問題を解決しながら美に触れていく。
芸術が魅せる、込める、放つ感情を描いた9つの連作短編集。
2001年推理作家協会賞受賞作
書評
とても芸術の美を大切にした物語だと感じました。
手法はミステリだったりするのですが、そこまで気になりません。それよりも芸術とはどういうものなのかを問題提起してくれるような作品ですね。
これを読んで面白かった人は、美術館などに行くと少し違ってくるのかもしれません。
そして、芸術によって浮かび上がる人の感情も、とても大切に扱っています。芸術と同等であるかのように。
注目すべきなのがSFの芸術作品ですね。現代ではない科学技術を使った芸術は、それだけで新鮮です。またその新しい芸術がどのような演出をするのかなどとても魅力的でした。そして、それに惑わされたり、癒されたりする人間の反応も。
芸術の美を赤ん坊のようにとても大切に腕の中で抱き、読者にそっと魅せてくれます。
暖かい物語と静かな文体で包み込まれ眠っている美を、起こさないように大事に読んでください。

