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Category 『 テッド・チャン』

lifestory『あなたの人生の物語』 テッド・チャン 著

早川SF文庫 987円


評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(星9個)

内容紹介
〔ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞〕地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれて、驚くべき運命にまきこまれていく……ネビュラ賞を受賞した感動の表題作はじめ、ネビュラ賞受賞のデビュー作「バビロンの塔」など、八篇収録する傑作集

紹介
作品を出すごとに高い評価を受けているテッド・チャン氏の短編集です。
なかなか作品を書くペースが上がらないので、当分一冊だけといった感じですが、この一冊だけでもとても濃密な読書となるでしょう。

宗教色の強いものを扱ったりするのですが、SF作家らしく丁寧に描写され、天使の降臨や情景などがしっかりとイメージできます。そして、その宗教作品のテーマを皮肉な神の視点が語るのです。
『地獄とは神の不在なり』は僕の中でとても皮肉な目で人間を見ている気にさせました。聖書なんかをこういう風に捉えるのはまた興味深いですね。単純だが、芥川の『蜘蛛の糸』なんかもこういった印象を受けた思い出があります。では一作品ずつ紹介します。

「バビロンの塔」
読んでいて面白かったのがバビロンの塔の建造方法。こういうものを読ませるのが小説の面白さだと思うな。他のメディアだとただ建てただけに終わるところだが、これはきっちりと工程を描写しているし、なによりも建造に関わる人の文化や風土が面白い。テーマ的にはSFにありふれたテーマかと思うが、塔の建造が面白いのですらすら読めた。どうやって建てるのかなぁと思ったら読んでみては?

「理解」
超絶スーパーマン対決。というとハリウッド映画みたいだけど、これは映画じゃつまんないね。
外見は普通だから。すごいのは文字通り中身。脳の損傷を回復するクスリの副作用で、脳の機能を完全に使えるようになる。つまり百%。もしかしたら人類が強くなるということはこういうことかも。
一番動くのは脳みそだ。そしてその副作用を持つ者同士の戦い。絵的には地味。
しかし、じつはとても高度な次元で戦っている。こんなのは小説でしか味わえないなぁ。
映画とかだと地味で実験的なものになっちゃうね。最高でした。

「ゼロで割る」
章ごとにはなんとなく理解したのだが、その章と章の関わりが読めなかった。数学が入るのだが僕は全くわからないので、これは紹介できない。でもこの著者のことだからきちんと構成はされている。しかし、読めなかった。単純に己の能力不足です。不甲斐ない。

「あなたの人生の物語」
異星人とのコンタクトもの。異星人と会話するのはどうするのか?それを丁寧にしっかり書いている。当たり前のことだが、これをやれるのはなかなかいない。SF作家たる由縁か。
その異星人の言語を知ることで、主人公の女性の未来にも影響が出る。詳しくは説明できないが、言語の威力とは想像を絶するなと思った。当たり前に触れているが、言語というものは危険なものかもしれないね。素晴らしい作品。僕としては飛浩隆氏の「象られた力」並に。つまり最高ってことさ。

「七十二文字」
ゴーレムもの。これも僕のは少し難しかった。そして楽しめなかった。いまいちイメージできないのでなかなか読み進めない。申し訳ない。

「人類科学の進化」
数ページしかないショートショート。立ち読みできるぐらいだから、してみては。
著者の視点というものが見えると思う。切れ味鋭いね。

「地獄とは神の不在なり」 Hell is the Absense of God
最初に紹介したが、これが一番僕の好きな作品。テーマも面白いし、構成も見事。
時々思う。宗教を信仰することってどういうこと?僕なんかはオウム真理教が起こした事件で宗教というイメージはあまりよくない。というかそれ以降になってから、ネット上でもファンを揶揄する言葉として「信者」という言葉を使うようになった気がする。
でも、もし今現在すさんだ人を助ける人がいるのであれば、無条件の愛を共有する宗教ではないかと思う。でもそれを教義にすると、この物語のような展開になってしまうのだ。
個人的な考えだが、教祖というものよりも、神様というものを讃えるようにした宗教は素晴らしいね。うまいと思う。教祖がいるとそこに無条件の愛なんて存在しないから。
話が逸れてしまった気がするが、この文章を読んで興味を持ってもらえればさいわいです。

「顔の美醜について―――ドキュメンタリー」
ドキュメンタリー風に展開していく小説。
短く説明できないので、省く。もし人間の顔を見るときに美醜がわからなくなったらどうなるかってことだ。今現在顔の美醜は最も認められている差別だ。
それをなくしたらどうなるって話。
僕はね、文中に出てくる「ダニエル・タグリア、ペンブルトン大学比較文学科教授」のスピーチに一番近いかな。もちろんカリーは一度は試したいけどね。

終わりに
本当にたくさんの賞にノミネートされているし、日本のSF読者にも人気がある作品。
だから、SFを読もうかなと思ってる人にはお薦めしたい。僕が楽しめたのだから、問題ないです。
まだSFを読み始めて1年もたってないし。せいぜい50冊ぐらいだから。難しいからと避けずに知らない人にも読んでもらいたいな。こういうのはSFにしかない面白さだから。いくらテーマが文学っぽいものであれ、その表現方法はSF的手法を使っているから。最高でした。満点でないのは僕の読解力の無さです。

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