『顔のない敵』 石持 浅海評価 ☆☆☆☆☆☆(星5個)
あらすじ
1993年、地雷除去作業をしていた最中に、突然爆発音が鳴る。現場に駆けつけると、そこには頭を吹き飛ばされた青年の姿が。なぜ、まだ地雷を撤去していない場所に入ったのか?なぜ足ではなく頭部が吹き飛ばされているのか?
表題作を含む地雷をテーマにしたミステリーが6作、処女短編が1作入ったファンには嬉しい内容。
第七回本格ミステリ大賞ノミネート作品。
書評
なぜか現時点で一番書評を書いている石持氏の新作ですが、連作短編は初めて読みました。
総合的にはいまいちといったところ。短編ながら、その中でうまくミステリーを入れています。トリックにしても真新しいものはないもののうまく出来ていると思いました。
さらに、著者の意図でもある地雷についてフィクションで出来ることがうまくストーリーに盛り込めていたと思います。
地雷を作る又は除去するということはこういうことなのかと関心を示しました。
みなさんは地雷についてどのような印象がありますか?たぶん踏んだら爆発して、致命傷とはいわないまでも、足がなくなったり場合によっては死に至るというぐらいの知識だと思います。
そういう方はたぶんこの本を読んで思い直すと思います。興味のある方は是非どうぞ。
ここまでで星5個です。
不満な点は、石持氏の作品共通の感想なんですが、どうも犯人の意図や動機が納得いかないんです。納得いかないというのは一見まともな(理解が出来るという意味)動機で殺人を犯しているにも関わらず、その気持ちが全然伝わりません。読んでいるとあっさり殺しているようにしか思えないのです。どうせなら意味のわからない動機であったほうがまだしっくり来るような気がします。
一見まともな理由であるが故にそれに納得できずにいると、最後の結末にとても違和感を感じてしまうということです。
ミステリ作家の作品に共通していえることですが、トリックやネタに集中するが故にキャラクター性やストーリーがおろそかになるという現象があります。
ミステリーとしては地味ですが、秀逸であると思います(本格ミステリ大賞にノミネートされているし)。作者の意図もすごく伝わってきます。地雷に関しては改めなおされました。
しかし、総合的に一冊の小説としては、いまいちな印象があります。もう少し、エンターテイメント性を持って欲しいと思いました。
『BG、あるいは死せるカイニス』のような突飛で面白い作品を書けるのだから、次回作にはまだまだ期待します。
『BG、あるいは死せるカイニス』 石持 浅海 著評価 星9個
あらすじ
うまれたときはすべて女性。その何割かが後に性転換して男性になる。その男性は優遇される。4人に1人が男性という割合でできている世界。そんな世界で女性の強姦未遂殺人事件が起こる。しかし、この世界では通常、男性がレイプされるものである。なぜ女性が?そしてなぜ殺されたのか?そして都市伝説とされているBGの存在は?
書評
正直、僕はこれが一番おもしろかった。最高だった。これを読むまでに「月・水・扉」と読んでいたが、おもしろかったものの正直、飽きてきた。いわゆる「これは!」という作品がないのである。どれも平均点は超えてくるが、最高点はないという感じだった。この実力なら、もっと壮大な本格ミステリも書けるだろうと思っていたところで、この作品に当たった。結果は良かった。とても。
まず、舞台設定はユニークでおもしろい。独自の設定を造っている。特にこういうものは頭でっかちで最後はただのミステリで終わってしまう作品が多い。
しかし、この小説はその舞台設定があるからこそできる作品になっている。最後までこの設定を生かしきっている。とても良かった。
ただ、キャラクターに関しては正直、なんとも思わない。不満があるかたもいるんじゃないかな?
この小説は舞台設定を楽しんでくれたらいいんじゃないかな。これだけでご飯三杯はいけると思う。太い長編だからこそできる話だと思います。楽しんでください。
『扉は閉ざされたまま』 石持 浅海 著評価 星7.5個
あらすじ
同窓会をするために集まった7人。そこで主人公は密室殺人を計画する。見事、実行した主人公だが、その行動に参加者の一人が気付く。閉ざされたままの扉の外で、探偵役と犯人役が対決する。その攻防の結末は?
少し前やっていた古畑任三郎といったところか!?今年の「このミス」二位に選ばれた作品!(ちなみに一位は東野『容疑者X』)
書評
まずは装丁に惹かれた。ライトノベルではないが、キャラクターの特徴がしっかりと現れていておもしろかった。量も二段組で200ページぐらいなので、あっさりとコンパクトに読めると思う。(ちなみに僕は2時間強といったところか)
魅力は扉が開かれないという点だろうか?ミステリ好きだとすぐに密室を開けたくなるが、これはまず開かない。けれども犯人は頭のいい女性に追い詰められていく。この1点だけが本の味噌だと思う。まぁ、この薄さだとそれぐらいしか無理だろう。無駄なく書いているので、すっきりしているし、洗練されていると思う。
長編本格推理と書かれているが、これを長編とするかは僕は疑問。中編だと僕は思っている。まぁ、どうでもいいことだけど、、、。
このミス二位に選べれたぐらいなので、読んではいかがですか?ミステリ好きに逆にお勧め!新鮮でした!
『水の迷宮』 石持浅海 著評価 6(星10個中)
あらすじ
人が溢れる水族館で一通の脅迫メールが届く。狙われたのは展示生物。なぜ展示生物を狙うのか?疑問に思いながらも職員は生物を守るために必死に動く。しかし、殺人事件は起きてしまった。それは3年前の職員が死んだ事件へとリンクする。果たして犯人は?そしてその意図は?
謎の裏に隠された感動的真実が明かされる!!!
書評
今回は水族館がテーマということで、雰囲気はかなり感じることができる文章でした。キャラクタ(森調)はほとんどリアルに描けてたと感じました。特にイルカショーの司会の女性なんかは、素晴らしくリアリティに書いていました。
謎に関しては、展示生物が人質ということでなかなかおもしろい脅迫の方法でおもしろかったです。水族館を舞台にすることによって生まれた方法ですね。題材はとても良かったです。
ただ、トリックは途中で気付く方もいると思います。少し間延びした展開なので、考えているうちに解けるひともいるんじゃないかな?トリックに重点を置いている読者にとっては物足らない感じもするでしょう。
最後の結末に関しては、気に食わない方もたくさんいると思います。そういった意味では『月の扉』のほうがおもしろいです。
あの結末を納得させるだけには少しキャラクタを結末に添った形にしなくちゃいけないんじゃないかな。
ただ、水族館という舞台設定だけで僕は満足しましたね。前述の通り、脅迫方法も新鮮でした。読んでみても損はないんじゃないかな。ただ感動を最後に味わえるかは正直、期待しないほうが・・・。
石持を最初に読むなら『アイルランドの薔薇』か『月の扉』をお勧めします。
以下、ネタバレです。↓

