『掌の中の小鳥』 加納 朋子 著評価 8.5(十段階)
あらすじ
偶然を引き寄せて出会った男女の身の回りに起こる日常的な謎をめぐるストーリー。
偶々?入った店「エッグスタンド」で、様々な話が展開される。なんでもないことが結びつき
一つのストーリーを浮かび上がってくる。一見クールに見える男と勝気で強い女の周りで女心を描き、男のプライドが見え隠れする謎が展開される。非常に人間的な青春ラブストーリー!
恋愛を根底にしながらも、それぞれ関連性を持ったバラエティ豊かな五作が詰まった連作短編集。
この本を初めて読んだとき、とても新鮮でした。女性作家が書く女性像がこんなにもリアルに
書かれているとは、思いませんでした。偏見があるかもしれませんが、男性作家の本に出てくる女性が男の願望に満ちた女性像になっているように思えます。美人でスマートで少し怪しさがあり、ミステリアスな雰囲気を持っているような感じです。
しかし、ここに出てくる女性は非常に現実味を帯びた女性です。だからといって魅力に欠ける
というわけではなく、とても引き込まれます。
この部分が僕にはとても新鮮でした。女性にしか描けないキャラクターではないかと
思います。是非、男性に読んで欲しいですね。
もう一点は、ストーリー自体にあります。出てくる謎も重いものではなく、日常的で
比較的やわらかいものなので読みやすいです。すんなりと読めるのではないでしょうか。
特に三作目の自転車泥棒なんかは最後一つの物語になったときは気持ちのいい読後感が
ありました。映画になっても良さそうな雰囲気です。
これくらいの本なら、映像化してもいいと僕は思いますけどね。
ただ、少し不満を感じたのはもっと男がロマンチストであってもいいんじゃないかと
個人的に思いました。まぁ、これは僕が男だからかもしれません。
『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂 幸太郎評価 9(十段階)
あらすじ
確実に他人の嘘を見抜くリーダーを筆頭に、正確な体内時計の持ち主、演説の達人、天才スリという面々で組織されたギャング団が活躍する長編エンターテイメント。自分たちの美学に基づいて銀行強盗をしている。
しかし、ある銀行を襲った際、お金を奪って車で逃走したところまでは良かったが、そこで別の窃盗団が乗った車と接触事故を起こしてしまい、挙句の果てにお金を奪われてしまう。窃盗団の正体は?本当に偶然だったのか?
主軸のストーリーとともにいじめの問題やら自閉症などが絡まってくる。テンポ良く読ませて、映画を見ているかのような作品。
伊坂氏の本はもう5冊ほど読んでいますが、これが一番楽しめたと思います。
なによりも、キャラクターがとても魅力的に書かれています。個人的にうそばかりつく演説の達人が良かったと思います。京極氏の榎木津探偵を少し感じさせました。
地の分も相変わらずの出来です。だから伊坂氏が好きな人は楽しめるでしょう。
いつものように、伊坂氏の作品の共通項である『ボブ・ディラン』『犬』などが出てきます。
かなり、早く読めたのもリズム感が良かったせいでしょう。本当に映画を見ているような気分でしたね。軽いものなのでちょっとした時間に気軽に読めます。
ミステリーという点からみれば、少し伏線が見えすぎて謎を追求するという点では物足りなく感じるでしょう。結末も先にわかるかもしれません。
しかし、この作品はこれぐらいでいいと思います。幅広い人たちに受けると思います。
最初に伊坂氏を読むとしたら、この本を僕は薦めます。
もし、面白かったら、『オーデュボンの祈り』を読んでみてはいかかでしょうか?
『ルパンの消息』 横山 秀夫 著評価 7(十段階)処女作としてなら9かな。
今回は横山秀夫氏の幻の処女作『ルパンの消息』を紹介したいと思います。
この本は光文社創立60周年記念特別として刊行されました。
一本のタレ込みによって事件は幕を開ける。
15年前に自殺として処理された女性教師の墜落死は、実は殺人事件だった!
犯人は当時の男子高校生3人!?時効まで24時間。
話は女性教師の死と絡み合う「ルパン作戦」に遡っていく。
そして、あの昭和の大事件「3億円事件」との関係は!?
拙いですが、あらすじはこんな感じです。
僕は横山氏の本は他に2,3冊読んでいるのですが、今となってはこの本を読む前に
何冊か読んでいて良かったなと思います。
この帯を見て横山氏を初めて読もうと思う方がいると思います。
でも、それはあまりお勧めしません。(余計なお世話ですが・・・)
僕のお勧めとしては他のクライマーズ・ハイや半落ち・影の季節など、
他の作品を読んでからこれを手に取ったほうがいいと思います。
そうすれば、処女作としてこの本を味わえると思います。要するに他の著作と比較すれば、おもしろいと思います。
このルパンは処女作であるがゆえに作者の情熱がたくさん込められてます。
正直、シンプルでないし、余計なストーリーを入れすぎなのではと思います。
複眼的ミステリーと、帯には書いてありましたが、少し詰め込みすぎなのでは?と個人的に思いました。
しかし、処女作品としてはすごく楽しめます。一人一人のキャラに味をもたせ、でかいテーマ(3億円事件)と絡ませる。この意気込みが充分に伝わります。
処女作品にしか出せない味が出ています。
正直言って、クライマーズ・ハイや半落ちには横山氏特有の泥臭い熱さの点ではまだまだかなと思いますし、現場の緊迫感やスピード感はやや不足かなと思います。
処女作品でないとしたら、そこまで評価されないと個人的には思います。
だからこそ、これを手に取る人には処女作品としての良さを味わってほしいと思います。(個人的にクライマーズ・ハイがお勧めです)
『好き好き大好き超愛してる』舞城 王太郎評価 7(十段階)
メフィスト賞にてデビューし、03年三島由紀夫賞を受賞した覆面作家舞城王太郎の作品。一時は芥川賞(直木賞?)の候補になり、話題になったことで知っている人も多いかもしれない。
この作品は、表題作と「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」の2作からなっている。
個人的に表題作のほうがおもしろかった。作家と死に直面している一見ありきたりに見える話である。そして現実と小説のリアルさが交差しているラブストーリー。一見、恋愛を描いていないように見えても、テーマは一貫して愛である。
この作品で彼の小説への姿勢が少し、窺えたような気がする。
この人の作品は人の夢を読んでいるような気がするが、それが顕著に現れている作品だと思う。夢って結構むちゃくちゃですよね?でもフロイト?に言わせると夢はなんらかの意味があるみたい。舞城氏の夢もしっかり意味はあります。夢を書いているだけではありません。
デビュー作でもある奈津川シリーズの「煙か土か食い物」より失踪感はあまりないです。
でも下手な恋愛小説よりずっとおもしろい。今、ブーム(?)となっているありきたりな純愛に嫌悪感を抱いている人はこれをお勧めします。舞城氏を読んだことがない人もこれをまず読んでみたらどうですか?
本領発揮ともいえるドリルホールのほうも一緒にあるから一石二鳥。
あと舞城氏はイラストも書いています。絵のことはさっぱりわかりませんが、彼(彼女?)らしい絵です。
ドリルホールはあえて何も言いません。最初のインパクトを味わってほしいから(笑)
舞城氏の作品は失踪感はとてもあるがゆえに、改行が極端に少ないのでテンポが合わないかも
しれませんが、それもこの人の作品の特徴です。
舞城王太郎氏を未読の初心者にお勧めの一品。
『チルドレン』 伊坂幸太郎評価 8 (10段階)
2004年5月20日 発行
内容紹介
五作の短編集。互いにリンクしており、主人公は言動と行動が矛盾し
ながらも、筋の通った人物「陣内」
彼の周りで起こる(起こす?)哀しくも暖かい事件。
強烈なキャラクター陣内の魅力あふれる短編で出来た長編。
(わかりにくくてすみません)
最近、はまっている作家です。本となって世に出ているものはこれです
べて読み終えました。
チルドレンは伊坂氏の作品でいうと『陽気なギャング』に似た作品だと
僕は思います。なによりもキャラクターの魅力があふれている作品なので。
短編ならではのストーリー構成でしっかりと起承転結になっています。
落ちもしっかりついて、軽く読めると思います。
時系列になっていないのですが、一冊通じて読み終わったときには「陣内」の成長と生きる姿勢が読み取れると思います。
amazonで著者が
と言っていたのはこれが理由だと僕は解釈しました。「短編集のふりをした長編小説です」
伊坂氏の作品は短編集が多いです。文芸誌に投稿しているものが多くまだ本になっていないのもたくさんあるようです。確かに文芸誌でも楽しめるし本になっても楽しめる書き方だと思います。
有名な作家(芥川龍之介)のとても良い詩などが引用されているので、飾りつけもうまくしています。
少しネタばれになるかもしれませんが
『その罪を憎んでその人を憎まず』のくだりは最高でした。
『なるほど』と思いました。
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映画関係がとても詳しく最新の情報を取り入れているので
興味のあるかたは是非!
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もう独立したので後に閉鎖するのですが合同プロジェクトなど
やっていたので、しばらく置いときます。
また雷王とはなんらかの形でおもしろいことをやろうと思います。
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