『容疑者 室井 慎次』評価 ☆☆☆☆☆ 星5個
批評
うーん、惜しい作品でした。最初は室井慎次のキャラが映画の雰囲気を作っていて、とても主人公らしい、室井らしい雰囲気を感じたのですが
後になっていくにつれて、少しだれ気味になりましたね。
というのも、あまり緊張感が伝わらなかったです。警察の思惑や事件の真実の大きさが伝わってこなかったです。テンポが悪かったような気もします。
あと、主人公の室井や弁護士役の田中麗奈がとてもいい味を出していて、いいコンビだと思ったのですが最後まであまり活躍せず。
最後の警察署での場面においても、室井の覚悟や弁護士の勇気があまりにもないがしろにされた気がしました。
ということで少し辛めの星5個。とても雰囲気も良く、キャストもばっちりだったのですが、ストーリーと展開がいまいちでした…
ただ、エンターテイメントとしては良かった点もあります。あの警察署のお気楽コンビや相川翔の刑事など、あとは言葉だけに出てくるあの人など、踊るファンを楽しませるものもたくさんありました。
新宿北署の意味のわからない派手な設定もエンターテイメントということでよかったです。
全体がシリアスな分、清涼剤でよかったと思います。
もうすこし室井さんの篤さを感じたかった…。
個人的に言えば、原案だけでも横山秀夫氏なんかに任せてみたら
良かったのではと思いました。警察小説と人間の情の熱さを見事
に書く人だと思うので。
そうすればもっと最後は盛り上がった展開になったのでは?と
思います。
結果的にいえば普通だったなという印象です。
『サスツルギの亡霊』 神山 裕右 著評価 ☆☆☆☆☆☆☆ 星7個
あらすじ
三年前、南極大陸で行方不明となった兄から突然一枚の絵葉書が、弟である主人公に訪れる。兄に関わる謎を解くために主人公は南極へと行く。様々な意図が南極に集結し、事件は幕を開ける。
南極を舞台に悲しくも荒々しいストーリーが展開する冒険ミステリ!
江戸川乱歩賞最年少受賞の作家が描く第二弾!!
書評
新人作家さんの第二弾なので、一発屋なのか違うのかという判断もされるであろう作品です。
僕は全くいい意味で期待を裏切るところはありませんでした。前作の『カタコンベ』を受け継ぐ自然の壮大さやアクションの激しさ、展開の仕方などパワーアップしていると感じます。
似ている作家さんであれば、笹本稜平氏の作風と似ていると思います。『極点飛行』のような感じを想像してください。
以下、良かった点。
やはり前作の良さがしっかりと出ているといったところでしょうか。人物の感情の絡み合い、自然の雄大さ、アクションシーンの良さなどがしっかりと今回もあります。(ちなみに前作は洞窟を舞台としています)
今回に限っていえば、舞台が広くなったので、ストーリーの動きに幅が出てとても良かったと思います。舞台設定が南極(正確にいえば昭和基地周辺)という広い場所でもしっかりと広がりを持ち、それにも関わらずまとまりがある構成に仕上がっています。
少し、不満であった箇所もあります。しかし、これは期待するが故に注文をつけているだけで、結果としては満足しています。
その不満な点とは、最後に感じたことですが、少し人物を主人公に絡みすぎている気がします。犯人の動機などに関しても。それは伏線だけでは絶対わからないといった印象を受けました。
(これは僕が深く読めていないことが要因でもあります)
もう一点、もっと兄の描写を増やしてほしかった。読んだ印象ではとても興味を惹かれる人物設定だと思うので、もっと兄について知ることができれば、ストーリーに入り込めた気がします。
総合的に満足した本でした。笹本氏を好きな読者の方にもお奨めできると思います。不満な点もあえて挙げただけです。次回作に改善されていることを期待しています。まぁ、乱歩賞を取っているので未読の方にも安心して手に取って頂けると思います。
『氷菓』 米澤 穂信 著評価 ☆☆☆☆☆☆☆ 星7個
あらすじ
常に「省エネ」をポリシーに生きる、高校生折木奉太郎は、逆らえない姉の言いつけで廃部寸前の古典部に入る。その部室にいたのは豪農で知られる家柄の千反田える。そのえるからもたらされた謎を、折木は解くことになる。悪友福部里志と毒舌伊原摩耶花と共に、日常起こる謎を解いていく。毎週金曜日に借りて返される本の理由は?部室を締めたのは誰?古典部の文集「氷菓」にまつわる謎。など日常に起こる謎を奉太郎が仲間と共に解いていく青春ミステリ!!
第5回角川学園小説大賞のミステリー&ホラー奨励賞受賞作。米澤氏のデビュー作。
書評
もともと角川スニーカー文庫から出された作品です。僕が手に入れたのは角川文庫からです。最近に北村薫氏の円紫さんシリーズを読んでいたので、殺人が起こらないミステリは抵抗なかったのですが、やはり時代の差を感じましたね。
古典部のキャラクターはとてもゲーム性に富んだ性格になっています。ライトノベル出身だけあって、その感じが出ています。読んだ方の中には、こんな高校生はいないと言われる方もおられるかもしれません。(それがリアルではないと僕は思いません)
ただ、ここで言いたいのはこのキャラ付けは決して装飾だけではありません。話の根幹にしっかりと根付いています。主人公奉太郎は探偵役。ヒロイン千反田えるは事件の謎をもってくる役。福部は情報収集役。伊原は謎を持ってくる券行動役。といった風にしっかりとキャラが生かされています。
このキャラは自分に合わなくても、しっかりと根付いているのでストーリーが気に入れば、次第に気に入ってくるかも。
で、内容ですが前半の謎は少し物足りないものかもしれません。しかし連作になっているので最後の章にもしっかりと関わってくるので、最後まで読めると思います。殺人が起きなくても、魅力的な謎はあるというものを見せ付ける本だと思います。
特に最後の氷菓にまつわるエピソードはとても魅力的な話になっています。段々と盛り上がってくる構成ですね。
少し、不満な点を挙げるとこの本は古典部シリーズの紹介になっているという点でしょうか。最初の部分などはキャラクターがどんなものなのか?という部分を説明するために用意された話という感が否めないです。その分、内容的に物足りないことがあるかもしれません。
もう一つは伏線の使い方でしょうか。別に不満があるわけではなく、例えば伊坂氏の「ギャング」なんかと比べると技術的にまだまだな点があると思います。もっと伏線をうまく使えれば、全体を通して底上げできるのではないかと思いました。まぁ言うだけなら簡単な話なのですが。
少し補足。これ以後の作品を読むと伏線ももっとうまく使われています。やはりデビュー作といったところでしょうか。「小市民」シリーズなんかはとてもうまく伏線を使っています。
最後に。もしこのシリーズが気に入れば、次の『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』と続くので是非読んでください。もっと気に入るはずです。深く深く面白くなっていくので。
評価としては途中までは星5個でしたが、最後に盛り上がったので星7個で。
ところで古典部って何をするの?と疑問がありました。しかしこのシリーズ3作を読んでこの謎を解くのが古典部の活動かなと思いました(笑)
余計なことですが、米澤氏の全作品を読んでいるのですがしっかりと実力はあると僕は思います。
米澤氏の公式サイト→ 汎夢殿
近況報告やこれからの予定などもあるので要チェックです。
前回に続き、月間で読んだ本の記録を出したいと思います。
僕にしか意味はないかもしれませんが、少し紹介もします。
4月期に読んだ本(8冊)
伊坂 幸太郎 終末のフール
北村 薫 スキップ
梨木 香歩 西の魔女が死んだ
本多 孝好 MISSING
米澤 穂信 夏季限定トロピカルパフェ事件
米澤 穂信 氷菓
米澤 穂信 愚者のエンドロール
米澤 穂信 クドリャフカの順番
という感じです。
米澤氏ばっかりですね・・・。もう米澤氏は全作制覇したと思います。
最初はそこまではまると思わなかったのですが、古典部シリーズが面白く一気に読んでしまいました。米澤氏については今後じっくりと紹介します。
伊坂氏の『終末のフール』は60点という感じでしょうか。ギリギリ可です。他の読者の方からしたらもっと点数は良いでしょう。内容だけでいうなら73点ぐらいはあるかも。しかし、伊坂氏のすべてを読んでいる僕からしたら、正直飽きました。なら他の作家を読めと言われるでしょう。しかし期待をしてしまいます。『魔王』のような作品も書けるのだから是非違った作品に挑戦してほしいという思いです。(こう考えると作家は大変だなと思います。同じような作品を書けと言われ、逆に飽きてきたと言われる)
梨木氏の『西の魔女〜』は77点ぐらいかな。最後の場面までは60点という感じでした。魔女と主人公の女の子の関係はすばらしかったですけどね。でもよくある感じでしょう?しかし、最後でとても良い仕上がりになっています。このエンディングはちゃんとすべてを集約した形になっています。
北村氏の『スキップ』はSFものですが、時間のスキップというよりも足のステップのスキップという感じのほうが強いでしょう。最初は出来ないスキップを頑張って練習し、最後はしっかりとスキップするといった流れです。SFという部分は単なる装飾程度です。主人公の成長のスキップを見るといった感じでしょうか。完全なSFだと思っていたのもあり、個人的には80点。それを含めないなら75点といったところでしょうか。
本多氏については書きません。この人は2冊目ですが、まだ面白い作品に出会っていません。もしかしたら会わないのかも。しかし、この人を読むなら伊坂氏を薦めますね。少しストーリーや少し気の利いた会話やセリフなどが似ていると感じました。ただ圧倒的に面白さでいえば伊坂氏かな。本多氏で面白いのが読めれば紹介します。
じゃあ、今日はこんな感じで。
僕にしか意味はないかもしれませんが、少し紹介もします。
4月期に読んだ本(8冊)
伊坂 幸太郎 終末のフール
北村 薫 スキップ
梨木 香歩 西の魔女が死んだ
本多 孝好 MISSING
米澤 穂信 夏季限定トロピカルパフェ事件
米澤 穂信 氷菓
米澤 穂信 愚者のエンドロール
米澤 穂信 クドリャフカの順番
という感じです。
米澤氏ばっかりですね・・・。もう米澤氏は全作制覇したと思います。
最初はそこまではまると思わなかったのですが、古典部シリーズが面白く一気に読んでしまいました。米澤氏については今後じっくりと紹介します。
伊坂氏の『終末のフール』は60点という感じでしょうか。ギリギリ可です。他の読者の方からしたらもっと点数は良いでしょう。内容だけでいうなら73点ぐらいはあるかも。しかし、伊坂氏のすべてを読んでいる僕からしたら、正直飽きました。なら他の作家を読めと言われるでしょう。しかし期待をしてしまいます。『魔王』のような作品も書けるのだから是非違った作品に挑戦してほしいという思いです。(こう考えると作家は大変だなと思います。同じような作品を書けと言われ、逆に飽きてきたと言われる)
梨木氏の『西の魔女〜』は77点ぐらいかな。最後の場面までは60点という感じでした。魔女と主人公の女の子の関係はすばらしかったですけどね。でもよくある感じでしょう?しかし、最後でとても良い仕上がりになっています。このエンディングはちゃんとすべてを集約した形になっています。
北村氏の『スキップ』はSFものですが、時間のスキップというよりも足のステップのスキップという感じのほうが強いでしょう。最初は出来ないスキップを頑張って練習し、最後はしっかりとスキップするといった流れです。SFという部分は単なる装飾程度です。主人公の成長のスキップを見るといった感じでしょうか。完全なSFだと思っていたのもあり、個人的には80点。それを含めないなら75点といったところでしょうか。
本多氏については書きません。この人は2冊目ですが、まだ面白い作品に出会っていません。もしかしたら会わないのかも。しかし、この人を読むなら伊坂氏を薦めますね。少しストーリーや少し気の利いた会話やセリフなどが似ていると感じました。ただ圧倒的に面白さでいえば伊坂氏かな。本多氏で面白いのが読めれば紹介します。
じゃあ、今日はこんな感じで。

