G.T.T.B.A.M.

Aarchive 『2007年03』

verocity


『マルドゥック・ヴェロシティ 1・2・3』 冲方 丁

ハヤカワ文庫JA 680.680.680円(L→R)

評価 ☆☆☆☆☆☆(星6個)

あらすじ

味方への誤爆をしたという重い過去を背負った男、ボイルド。彼は軍隊研究所に収容され改造された。その影響で眠らなくなり、訪れる幻想に悩む彼を救ったのが、良心と悩める万能兵器ネズミのウフコックであった。そして、戦争が終結した時代が訪れる。自分達はもうこの世に必要ないのか?有用性を問うため、あるいは作るために、ボイルドと同じような仲間と共にはマルドゥック市に出る。
そこでは、自分達の力を使って、事件を解決に導くという仕事があった。有用性を証明するために事件をどんどん解決していくが、そのつちにある事件にぶつかる。その事件には彼らと同じような改造された人間の集団「カトル・カール」の存在があった。彼らを雇ったバックは何なのか?様々な政治の裏側が見えてくる。やがて、それらはボイルドらを巻き込んでいく。一人ひとり失っていく仲間。そして、このマルドゥック市が抱える闇に耐えるためにボイルドは自らを絶望に追い込んでいく。その絶望への移行に障害となるのは良心のウフコック。
『マルドゥック・スクランブル』へ繋がる絶望と未来への決意が読める物語。

書評

僕はスクランブルを読んでヴェロシティを読みました。たぶんほとんどの人がこういう読み方だと思います。
ただ、個人的には読む順番は逆でも全然かまわないと思います。支障はそんなにないと思います。しかし、僕としては面白さがスクランブルのほうにあったので、ヴェロシティを読もうと思ったわけで。ヴェロシティを読んで、次のスクランブルを読まない人がいるかもと言った感じですね。

特筆すべきは、やはり文体でしょう。「―」(ダッシュ)や「/」(スラッシュ)が多用されています。例を紹介すれば

砕け散る友軍――顔見知り/友人たち。
戦争の終結/処分――無に帰す第二のキャリア。


と言った風に。他にも=などが使われています。

人によっては読みにくいし、またはスピーディに読めるということもあるかもしれません。

ストーリーのほうはというと、ボイルドとウフコックの間に何があったのかということです。スクランブルを読んでる人は結末がどんな風なのかがわかるので、読むのに抵抗があるかも。

特に真新しいものは感じませんでした。スクランブルよりも政治のやりとりなどが多いかも。ミステリ要素もあり、アクションありですが、僕はスクランブルのほうが切れていたように感じます。

スクランブルであまり見れなかったボイルドを見ることができるので、ボイルドファンには良いと思います。

また、最後のエピローグで、スクランブルに繋がっていく面白さもあったので、星6個といった感じです。

スクランブルのほうが面白かったので、比較する以上、マイナス2個にしました。で、独特の文体が僕には何の効果もなかったのでマイナス2個で評価星6個です。
scramble


『マルドゥック・スクランブル』―圧縮― 
『マルドゥック・スクランブル』―燃焼―
『マルドゥック・スクランブル』―排気―
                      著者 冲方 丁
ハヤカワ文庫JA 660.680.720円(L→R)

評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆(星八個)

あらすじ

ある一つの事件から物語は始まる。権力をもった賭博師のシェルという人物が娼婦であるバロットを爆死させようとした事件である。瀕死の状態で助かったバロットは、自分を助けてくれた人物を見る。一人は変わった髪形をしたイースター博士、もう一人は、しゃべるねずみのウフコックだった!バロットが事件の被害者となり、ウフコックとイースターが事件の担当官としてタッグを組み賭博師を追及し始める。
賭博師にはウフコックやイースターと過去因縁があるボイルドという人物が付いていた。
少女バロットを守るためにウフコックがパートナーとなる。ウフコックは自在に変形し、万能兵器になる。そして、過去にそのウフコックを濫用したボイルドが対峙する。ボイルドの能力は重力を自在に操る力。壁を自在に歩き、目の前の空間の重力を変えて、銃弾をかわす。

なぜ、私が殺されるの?自分のアイデンティティーを探し彷徨う少女
俺を必要をしてくれるのか?自らの有用性を問うねずみ
俺がおまえの有用性を証明してやる!過去に囚われた男

それぞれの思惑が錯綜し、螺旋のように絡まりあっていく!

2003年第24回SF大賞受賞

書評

三冊という壮大な量ですが、とてもスピーディに読めました。
飽きさせない展開でぐいぐい引っ張ってくれます。また、ラノベ出身ということもあってキャラも魅力的で楽しめます。
テーマは少女バロットの自分探しや兵器として作られたウフコックの自分は世に必要なのかなどの普遍的なものとなっています。
少年誌や青年誌でよく使われるテーマでもありますが、やはり王道は面白いですね。比較的若い子も楽しめるSF作品です。
また、戦闘シーンやあとで述べるカジノシーンなどのハードボイルドの要素もあるし、色々な話が最後絡まっていき、謎を解き明かすというミステリ要素もあるのでなかなか幅広く楽しめる要素がありますよ。

特色を言えば、ほぼ一冊分に渡って繰り広げられるカジノシーンです。
内容はポーカー・運命の輪(ルーレットの中で玉を回して入った場所の数字や色を賭けるやつです)・ブラックジャック。
ディーラー側とプレーヤー側の素晴らしい攻防が繰り広げられます。万能兵器であるウフコックの技術を持ってしても、相手の動きやイカサマが見抜けないディーラーなどとの一進一退の攻防が描かれています。
イメージとしては、石田衣良氏の『赤・黒』のカジノシーンを彷彿とさせますね。とても緊迫したシーンが魅力的です。

あともう一つはSF的な魅力でしょう。近未来の科学技術は事件の真相や発端に繋がっています。ここでは紹介しませんが、情報化社会の歪みなどが見えるような気がしました。そして、その科学技術がぶつかり合うバロットとウフコック対ボイルドの戦いは迫力あり、興奮するものとなっていますね。

少し、引っ掛かる点などもありますが、それ以上に魅力が溢れていますので良かったらどうぞ。

ちなみに、ウフコックとボイルドの因縁は『マルドゥック・ヴェロシティ』という題名で出ています。こちらもまた紹介します。
このスクランブルを気に入った方は、ヴェロシティへ。
6冊分も楽しめる世界となっています。

以下、単なる余談です。

まず、テンプレートの変更。
プラグイン対応にしたので、これから面白いことができるかも。

まずカレンダーを付けた。なかなかおしゃれじゃない?
色も色々あるみたい。

あと、横のプロフィール。
画像にマウスをあわせると、もう一枚出てきます。
で、そこをクリックすると自己紹介ページに行きます。

二つほど、バトンをしてみました。

なかなか、気持ちの良いものになりました。

あと、今後の書評予定でも

『スロウハイツの神様』 辻村 深月
『第六大陸』      小川 一水
『シャドウ』      道尾 秀介

などなどです。ではっ!
ogawaissui-wakusei『老ヴォールの惑星』 小川 一水


評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆(星9個)

内容
4編を収録した中編集。テーマとしては、環境が主体にどう影響し、主体はどのように進化していくか。
迷宮の牢獄に放り込まれた人間が、生きるためにいかにその中で社会を形成していくかを描いた「ギャルナフカの迷宮」、ガス惑星に住む奇妙な知性体が、世代を超えて進化への道を歩む表題作「老ヴォールの惑星」、現実とは何なのか?仮想現実と現実の違いは?といったテーマで描かれた未知との遭遇もの「幸せになる箱庭」、陸地がなく夜もない海の中で、救出もない。その中で唯一、人と対話できる通信機だけで生き抜く男の物語「漂った男」
2006年第37回星雲賞日本短編部門

小川一水公式ページ→こちら
ハヤカワ文庫JA(Japanese Author)から出ています。720円

書評

飛浩隆氏の『象れられた力』とともにお奨めする中編集の傑作です。
小川一水氏は、ライトノベル出身でもあるので、とても読みやすいです。初心者にとても向いてるでしょう。もし、僕がSF作品を紹介してと言われたら、この本にしますね。
それぐらい抵抗なく読めます。テーマとしてもそこまで難しくないものなので。表題作と「幸せになる箱庭」が少し、変わっていて慣れていないかもしれませんが、これこそSFといった感じで素晴らしいです。

個人的には、「ギャルナフカの迷宮」のほうが表題作っぽい名前のような気がしたのですが、今思えば、このタイトルと表紙でよかったなと思います。読んでみれば、僕の言っていることはわかるでしょう。

「漂った男」は、筒井康隆氏のようなブラックユーモアを少し感じた作品でもありましたね。解説では、星新一氏を挙げてました。

「幸せになる箱庭」は、神林長平氏の『天国にそっくりな星』や『マトリックス』が好きな方は好きだと思います。テーマも似たような感じなので。


総合して言うと。
ライトノベル出身だけあって、読みやすい。使われている単語も専門用語ばかりではないのでわかりやすい。テーマもそれほど突飛なものではないので理解しやすいといった感じで初心者の方も楽しめるでしょう。ただ、中身はしっかりとSF作品なので、SFを十分に味わえると思います。
ベテランの方はこの作品のどこを評価するんでしょう?初心者の僕はちょっとわからないですね。

これが気に入った方は小川氏の長編『第六大陸』をお奨めします。『プラネテス』を好きな方も是非どうぞ。表紙はプラネテスを書いてる幸村誠氏ですよ☆こちらも星雲賞長編部門を受賞しています。
さてカウンター百回記念企画のテーマは今年公開される

劇場版コナン『紺碧の棺 ジョリー・ロジャー』→公式サイト

です。

わたくしは劇場版コナンのファンなので、こういう企画にしました。

では下からどうぞ!(カウンターを増やそうとしている)
deathandcarbon


今日、本屋さんで30分も悩んだ。
自分にしてもめずらしいことだ。

それは画像にもある二冊の本。

本当はどちらも買うつもりはなかった。
SF入りたての自分には少々ハードルが高い気がしたので。

レビューなんかを見ていると少し難解らしい。

ちなみに左は『オルタード・カーボン』リチャード・モーガンで、
右はというと『デス博士の島その他の物語』ジーン・ウルフだ。

どうだろう、このジャケット?
自分にはとてもかっこよかった。最近の言葉で言えば、
パナかっこいい(パナとは半端ないの意味らしい)

特に右のどくろは魅力的じゃないですか。なぜか僕の人生はどくろと奇妙に縁がある。どくろのTシャツに、高校のとき銅版版画ではベルセルクの絵にあるどくろを使った。大学の卒論でもどくろに関係していた。


でも、今日実物をびっくりしたのが左なんだ。
これは表紙だけだから伝わらないが、実際はすごい。
辞書みたいなカバーの中に二冊上下巻で入っている。画像のはその辞書のカバーである。今日見て、涎が出そうになった。

でも肝心の中身がわからない。ただのインテリアになるのは嫌だ。
2500円近くするのだから中身も欲しいな。
でも、どうやら難しいみたいだ。初心者の自分には合わないかも。

と、思って30分悩んでやめた。でもそうなると欲しくなる。
迷うな〜。


という、愚痴みたいな日記でした。

何より、びっくりしたのが、原史奈が結婚したこと…。
12歳上のサッカー解説者。
そんなにめちゃくちゃ好きでもないが、いいなと思っていたのは事実。
どうぞお幸せに。30半ばで美女と結婚とは夢を与えてくれるね〜。
人生はまだまだだ。

kaleidoscape『象られた力』 飛 浩隆


評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(満点)

内容紹介
80〜90年代初頭にかけてSFマガジンに掲載された中短編4作を収録。改稿もされ、珠玉の短編集となっている。
少しミステリー風味な『デュオ』・ユーモアありのファンタジー『呪界のほとり』・人間の五感を鋭く捉えた『夜と泥の』・"かたち"によって表れる"ちから"が、五感を通じて感染していく、表題作『象られた力』の四作。

表題作は、2005年第36回星雲賞日本短編部門受賞
      同年第26回日本SF大賞受賞

飛浩隆公式ページ→こちら
ハヤカワ文庫JA(Japanese Author)から出ています。740円


書評

今年に入ってから、SFを読み始めのですが、当たりに当たっています。それもあるサイトのおかげですね。

この作品もSFにどっぷりはまるきっかけとなりました。
あらすじは力不足で紹介できないので、四作共通して感じた部分について述べたいと思います。
まずは五感へのこだわりでしょうか。これでもかというぐらいたくさん五感が重要なテーマとして扱われています。
『デュオ』では、聴覚と触覚が、『夜と泥』では五感すべてを増感する機能や味覚と嗅覚が、表題作では視覚が重要な場面で使われています。

重要な場面で、人の五感を視点にするのはとても良かった。スムーズに場面が頭の中で展開されましたね。SFといえども、人間が中心に展開される上で、五感は読者のために欠かせないと思いました。

もうひとつ、なんといっても飛氏が描く文体がたまりません。ものすごく読ませます。普段速く読む僕もじっくり読まされました。独特のリズム感を刻んでいます。
そして、一語一語が脳にゆっくりと浸透していきます。まるで意味のない記号が連なったプログラムが、頭の中で一つの情景を描き出すように。いわゆるイメージ喚起力がとてつもないということです。
とくに『夜と泥の』では、こんなに少ない分量で壮大で宇宙のような広がりを魅せるのかと驚愕しました!
一語一語が連なって見せる力はとてつもなかったですね。
それこそ、「見えない図形」を感じました。感服です。

あと、もう一つ。解説も個人的に良かったですね。
先に読むか後に読むかは分かりかねますが、限られたページ数で的確に本作の評価をしています。本編に読んだ後に読むとうなずく部分が多かったです。気持ちを代弁してくれてました。秀逸ですね。

最高の出会いでした。他の作品も読みます、必ず。
ただ、唯一気がかりなのが、著者は遅筆とのこと。まぁ、こればっかりはしょうがないんですけどね。

最近のSF短編集で評価の高いものを挙げておきます。

飛浩隆 『象られた力』
小川一水『老ヴォールの惑星』
藤崎慎吾『レフトアローン』


※『老ヴォールの惑星』はまた紹介する予定です。
カウンターを付けてみた。

プラグイン非対応だったので、直接貼り付けるしかなかったんだけど、
どこにしたらいいかわからなくて仕方なくプロフィールのところにした。

これをするのに一時間もかかったよ…

←たぶんこのあたりにあるので、目立つかな?

しかも二重訪問禁止なので一人であげるのも一日一回ってこと!?

目標は今年中に100かな。
え?少ない?
たぶん妥当な目標だと思う。

確実に来るのは友人一人か…

雷王


よろしく!!
shinkai-5cm.kumo


たまには日記でも。

昨日、ルパンの「1$マネーウォーズ」を借りに行ったら、借りられてた…。
マイナーな作品だと思ってたのに、しょーがないから「ワルサーp38」を借りて、観ました。
なんかルパンや銭形の顔がスタイリッシュでびっくりした!


…卒論でも気付いたことやけど、文章で、「〜た」ばっかりで終わってる当たりが小学生の読書感想文みたいでやだね。

まぁ、ルパンはめずらしくすべてハッピーじゃなく、それなりに楽しめましたよ〜。

でもこうなると俄然、マネーウォーズが観たくなってきた!
近年のルパンで一番面白かったと僕は思っているね。

…そういえば、ネットでの一人称が統一できてない。友人のブログでは普段使う「俺」だけど、書評では「僕」を使っている。一体どれが一番印象がいいんじゃろう。真鍋かをりみたいに「オイラ」にしようか。
乙一みたいに「小生」にしてやろうか。


ここから本題

とても素晴らしいアニメに出会ったので紹介を。
でも、もう有名になってるので、今知らない人向けに紹介します。

オイラは雑誌ダヴィンチの特集コーナーで知った口なんですが、wikiを見る限り、賞もたくさん取っている人みたい。

名前は新海誠

詳しくは
wiki参照→こちら
新海誠公式HP→こちら
雲のむこう、約束の場所→こちら
秒速5センチメートル→こちら

youtubeもいいかもしれないが、とても綺麗な風景なので是非DVDで観ることをおすすめします。
あの宮崎監督の「ハウル」を抑えて受賞したりもしたみたい。

音楽や作画がとても優れていることで、評判がいいみたいです。
「雲のむこう」ではストーリーのよさも出たみたいだし。

小生が個人的に好きなところは、カメラワークですかね。
視点が変わっていてとても気に入りました。
是非観てみてください。

将来の宮崎監督みたいにすごい人になるんだろうか…

アニメは子供の見るものなんて低俗な考えを持たずにどんどん広がっていって欲しいものだ。
色々問題もあるみたいだけど、それでも日本から世界に発信する価値のあるジャンルだと思います。

ではっ
gusya


『愚者と愚者』上―野蛮な飢えた神々の叛乱
『愚者と愚者』下―ジェンダー・ファッカー・シスターズ
著者 打海 文三

評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆(星八個)

あらすじ

『裸者と裸者』に続く、近未来SFの第二弾です。『裸者と裸者』のレビューはこちら
上巻は、前回と同じように、佐々木海人が主人公になります。いつの間にか大佐になった海人は、責任が大きくなっていく中で様々な壁にぶつかっていく。大佐としての責任と友情がせめぎあい、海人は苦悩していく。さらに軍隊の中で、性差別の問題が重大な障害となる。近未来の戦争時の中で、普遍的な愛情や友情が描かれる。

下巻は、前回同様、月田椿子が主人公になります。椿子は女だけの先頭集団パンプキンガールズを結成する。下巻では様々な性が矛盾と暴力を生み、戦争に利用され、あるいは戦争を作り出す。堅甲なまでの男根主義・レズビアン・トランスジェンダーが浮き彫りになる。
それぞれに悩みや正義を抱えながら、戦いあう。椿子はそれらをどう解釈し、飲み込んでいくのか!?

書評

上巻
佐々木海人視点で展開されていくんですが、相変わらず海人は少年の純朴で幼い部分と軍人としての冷徹さと厳しさという矛盾を抱えています。少年らしさは、海人と仲の良い人との交流で垣間見れるのですが、それが戦争時における一時の平和に見えて感慨深げになりました。
海人がぶつかる問題がとても痛切に書かれていて、一番印象的でした。

海人を知れば知るほど、戦時における一時の幸せと戦争が引き起こす友情や愛情への悲劇や残虐さが身に染みてきます。

下巻
こちらでは、壮絶なまでの性問題が溢れています。それが戦争に発展し、ぶつかり合っていく。読んでいて思うことは、どれもが正義であり、悪であるということ。正しいということが人によって違うんです。
そして、男の僕は男根主義に疑問を思いながらも納得してしまう自分もいます。戦争という舞台を通じて、性の葛藤が描かれるのでとても新鮮でしたね。

女性が戦争にどのように参加するのか?というのは大きな疑問だと思いませんか?軍人として戦うのか、軍隊には入らず支援をするのか、など女性にとって大きなテーマだと思います。そしてその女性と男性の衝突も大きなものでしょう。
興味がある方は是非どうぞ。なかなか考えさせられてしまうテーマだと思いますよ。

総合
総合的に評価すれば、前回の裸者とあまり代わり映えしないという点で二点引かせてもらいました。とても面白いのですが、新しいものがなかったという感じです。
ただ、裸者のテーマが愚者で、より成熟されているという点で素晴らしいものとなっています。とくに下巻は、裸者の下巻のテーマであった女性の立ち位置が、より鮮明になりそしてその立ち位置がぶつかり合っています。

この愚者から読んでも全然支障はないと思います。むしろ過去が気になって仕方がないかも。

次回作で終わりになるみたいです。
確かな情報かわかりませんが、タイトルは『ハシャとハシャ』となるみたい。覇者かな?


以下、ヒトリゴトです。




jackinkamikochi『上高地の切り裂きジャック』 島田荘司


評価☆☆☆☆☆☆☆(星7個)

あらすじ

表題作―長野県の上高地で、女優の死体が発見された。死体は、腹を切り裂かれ、内臓を取られて代わりに石を詰め込まれていた。関係者には鉄壁のアリバイが。さらに最も怪しい容疑者は犯行時刻と思われる時に横浜にいた!外国にいる探偵御手洗が電光石火の如く解決する!

もう一編―『山手の幽霊』
これはまだ探偵御手洗と書き手石岡が一緒に住んでいた頃の事件。
いわくつきの屋敷で怪事件が起こる。一ヶ月前に閉じたはずの核シェルターから死体が出てきた!さらにその死体の人物は一ヶ月の間に街中で何度か見かけられていた!死体が出てきた今、目撃された人物は幽霊だったのか!?

一度、画像をクリックして拡大画像を見てみてください。

書評

一個前の記事を読んだ方はわかると思いますが、『切り裂きジャック百年の孤独』とデザインをセットにしているんです。切り裂きジャック繋がりということでしょう。
これだけで星2個といった感じです。

肝心の中身ですが、上高地の方は御手洗が海外にいることもあって、どうも解決部分があっさりしすぎている感が否めません。
しかし、謎の魅力はあるし、良いテンポで進んでいくのですんなり読めると思います。
ただ、御手洗シリーズを読まない方からすると少し物足りないかもしれません。里美ちゃんもわからないし、文中で出てくる事件も知らないでしょう。もし興味が沸いたなら、里美ちゃんは『龍臥亭事件』に初登場しますし、『最後のディナー』を読んでみると良いかもしれません。

山手の幽霊の方は、御手洗のいた頃の話なので上の作品より少し詳しく知ることができます。この話に出てくる丹下警部は、『暗闇坂の人食いの木』にも関連していますよ。
事件に関してもアクロバティックなものなので、派手で面白いと思います。
また、御手洗が一緒なので、真相解明の際は演出たっぷりで楽しめるでしょう。
読者の代表としてワトソン役の石岡君がいるので、彼を通して御手洗のキャラクターを楽しめますよ!!


御手洗がいた頃の時代と海外にいる時代の二つの事件を収録しているということでバランスのとれた本となっております。
他の本に出てくるキャラクターや事件の名も出てくるので、興味が沸いたら、是非他のものを読んでください。
御手洗ワールドはとても広いので長く楽しめますよ!
jack100『切り裂きジャック百年の孤独』 島田 荘司


評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆(星9個)

あらすじ

舞台は西ドイツ、1988年に娼婦5人が次々と腹を切り裂かれて殺される連続猟奇殺人が起こった。奇しくもこの事件は世界的に有名な切り裂きジャックの百年後である。ジャックの再来か?謎であった動機は何なのか?
この事件によって百年前の切り裂きジャックの謎を解き明かされるのか!?
島田荘司が描く切り裂きジャックの新しい新解釈。
新装版にて帰って来た!!

今回は画像をクリックすると拡大画像になるので一度見てみてください。

書評

星9個となかなか良い点を付けました。
理由は二つ。
一つはブックデザインですね。集英社や講談社からも文庫で出版されていますが、デザインは普通です。
今回のデザインは個人的にとても気に入りました。こういうデザインだと売らずに持っておきたいと思うので評価に入れました。
後で紹介しますが、別の本とセットになっているんですよ。

理由はというと、やはり単に切り裂きジャックの新しい解釈を述べるのではなく、百年後にまた同じような事件が起きたという設定で、新解釈を小説風に魅せていくという点でしょう。

探偵というものはおおげさに真相を解説していくでしょう?場合によってはその場で実験して関係者の度肝を抜く演出をしたりしますよね?

この小説はそういうものだと思っていいと思います。
単に僕はこういう解釈だと述べるのではなく、小説というなかで面白く表現していくのです。

また、霧の立つロンドンなどの雰囲気もとてもよく出ています。読んだ方はわかると思いますが、『アトポス』のエリザベートバートリの、美しさ故に処女の血を浴びる話を読んだときのような暗く恐い怪しい雰囲気がとても出ています。(個人的にアトポスのほうが雰囲気はとてもリアルに感じましたが)

ホラーが好きな方、ミステリーが好きな方、切り裂きジャックの興味のある方など幅のある層をターゲットに出来る作品でしょう。

少し、解決部分においてご都合主義的な面もありますが、それでもこの分量で切り裂きジャックの恐さや妖しさを表現し、独自の解釈を披露したのは天晴れでしょう。


※ただ、この解釈が本当に切り裂きジャックの真相に値するのかはわかりません。ジャックロロジスト(切り裂きジャックの研究者)ではないので。矛盾点も出てくるかもしれません。
ただ、僕は納得したし、フィクションとして多いに楽しめました。


faceless『顔のない敵』 石持 浅海


評価 ☆☆☆☆☆☆(星5個)

あらすじ

1993年、地雷除去作業をしていた最中に、突然爆発音が鳴る。現場に駆けつけると、そこには頭を吹き飛ばされた青年の姿が。なぜ、まだ地雷を撤去していない場所に入ったのか?なぜ足ではなく頭部が吹き飛ばされているのか?
表題作を含む地雷をテーマにしたミステリーが6作、処女短編が1作入ったファンには嬉しい内容。

第七回本格ミステリ大賞ノミネート作品。


書評
なぜか現時点で一番書評を書いている石持氏の新作ですが、連作短編は初めて読みました。
総合的にはいまいちといったところ。短編ながら、その中でうまくミステリーを入れています。トリックにしても真新しいものはないもののうまく出来ていると思いました。
さらに、著者の意図でもある地雷についてフィクションで出来ることがうまくストーリーに盛り込めていたと思います。
地雷を作る又は除去するということはこういうことなのかと関心を示しました。

みなさんは地雷についてどのような印象がありますか?たぶん踏んだら爆発して、致命傷とはいわないまでも、足がなくなったり場合によっては死に至るというぐらいの知識だと思います。

そういう方はたぶんこの本を読んで思い直すと思います。興味のある方は是非どうぞ。

ここまでで星5個です。
不満な点は、石持氏の作品共通の感想なんですが、どうも犯人の意図や動機が納得いかないんです。納得いかないというのは一見まともな(理解が出来るという意味)動機で殺人を犯しているにも関わらず、その気持ちが全然伝わりません。読んでいるとあっさり殺しているようにしか思えないのです。どうせなら意味のわからない動機であったほうがまだしっくり来るような気がします。
一見まともな理由であるが故にそれに納得できずにいると、最後の結末にとても違和感を感じてしまうということです。

ミステリ作家の作品に共通していえることですが、トリックやネタに集中するが故にキャラクター性やストーリーがおろそかになるという現象があります。

ミステリーとしては地味ですが、秀逸であると思います(本格ミステリ大賞にノミネートされているし)。作者の意図もすごく伝わってきます。地雷に関しては改めなおされました。
しかし、総合的に一冊の小説としては、いまいちな印象があります。もう少し、エンターテイメント性を持って欲しいと思いました。

『BG、あるいは死せるカイニス』のような突飛で面白い作品を書けるのだから、次回作にはまだまだ期待します。

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