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Aarchive 『2007年10』

有頂天家族 森見登美彦『有頂天家族』 森見 登美彦


評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆★★(星8個)

あらすじ
 糺ノ森に住む狸の名門・下鴨家の父・総一郎はある日、鍋にされ、あっけなくこの世を去ってしまった。
 遺されたのは母と頼りない四兄弟。長兄・矢一郎は生真面目だが土壇場に弱く、次兄・矢二郎は蛙になって井戸暮らし。三男・矢三郎は面白主義がいきすぎて周囲を困らせ、末弟・矢四郎は化けてもつい尻尾を出す未熟者。
 この四兄弟が一族の誇りを取り戻すべく、ある時は「腐れ大学生」ある時は「虎」に化けて京都の街を駆け回るも、そこにはいつも邪魔者が!かねてより犬猿の仲の狸、宿敵・夷川家の阿呆兄弟・金閣&銀閣、人間に恋をして能力を奪われ落ちぶれた天狗・赤玉先生、天狗を袖にし空を自在に飛び回る美女・弁天。狸と天狗と人間が入り乱れて巻き起こす三つ巴の化かし合いが今日も始まった。


紹介
京都に住む狸と天狗と少しだけ人間のお話。
雑誌「パピルス」で連載されていたのをまとめて修正したのもだが、相も変わらず森見節が炸裂している。
少し、古い時代の香りがする文体で、しれっと笑いどころを語るのはとても愉快。
小難しくって古臭い風にこのストーリーを語られるととても衒学的な雰囲気で楽しめます。
小説を読む楽しさの一つだと思います。

森見氏を知らない人もこれから読んでもなんら問題はないでしょう。好きになった人は他の作品に手を出さずには入られないぐらい森見氏の魅力に溢れています。
『太陽の塔』みたいな作品はもう書かないのかな?ああいう文学っぽさが出てるほうも好きですけどね。今回の小説はやっぱり『夜は短し歩けよ乙女』好きに向けた小説ですね。

前々作「夜は短し歩けよ乙女」ではまった僕もこの作品を読み始めるとすぐに安心しました。森見さんは変わらず面白いなと。
ベタな話ですが、これを読むとアニメの平成狸合戦ぽんぽこを思い出しますね。狸が最後祭りを盛大にするシーンなんかは森見氏に通じるところもあると思います。

クライマックスのシーンは「夜は短し〜」の如く、狂喜乱舞に京都の町が騒ぎますので
圧巻です。相変わらず色々なエピソードを組み合わせるのがうまい。

少し、不満な点は二つ。
一つは、章ごとに少し導入部分が書かれているところ。雑誌連載をしていたせいですが、本にする際は省いてもいいのでは?と思いました。
もう一点は、魅力あるエピソードがあっさり書かれているところ。偉大なる父総一郎が鞍馬天狗相手に化かすエピソードなんかはもう少し詳しく書いてくれても良いのでは?と思いました。

前者は仕方がないですが、後者に関しては個人的に不満なだけで、それは僕が総一郎含めキャラクターにとても魅力を感じているからこそだと思います。
どのキャラも生かされているので、個々のエピソードをもっと詳しく聞きたい!と思う読者の欲望そのものですね。

それぐらいキャラクターが魅力的に描かれていると思ってください。

それにこれはタヌキシリーズですので、まだまだ続く予定です。
なので最初からキャラクターを曝け出すわけではない。これからもっとキャラの色々な面が出てくるでしょう。楽しみです。このシリーズはまだ始まったばかり。

『鴨川ホルモー』の万城目学氏が好きな方も是非。畠中恵氏のしゃばけシリーズを好きな方にもお奨めします。

読後は、これからが楽しみだと思うことでしょう。
良かったら読んでみてください。
なにか本を紹介しようと本棚を探っていたのですが、断念しました。

今更人気作を紹介してもな〜なんて馬鹿みたいなこと考えてたら
気分が乗らなくなりました。出来れば今年中にカウンタ一万ぐらいを
目安にしていたんですが。


amazonで島田荘司氏のパロディ・サイト本のレビューを何気なく見たら
結構辛い(カライ)評価で驚きました。

僕が読んだ時は結構楽しめたような気がするんだけどね。

そして、なぜか英語でレビューしている人がいて面白かったです。
ミスター島田には失望したよ…みたいな言葉が愉快でした。

島田荘司といえば、来年から講談社BOXで書きますね!
毎月一冊ペースです。あのお歳で頑張りますね〜。
体に気をつけて頑張って欲しいです。


もう一つ
もうキャンペーンは終わったのですが、島田氏のベスト短編集が出ますね〜
半分はファンベストで、僕も5作品投票してきました。
ちなみに僕が挙げたのは

・IgE
・鈴蘭事件
・舞踏病
・紫電改保存委員会
・ギリシャの犬

です。まぁ単純にとても印象に残っている作品を投票したのですが、どうでしょう?
無難なところだと僕は思うのですが。


さて、
今月・来月に出る本の紹介でも(全部自分の好みばっかりですが)
10月

小川一水『時砂の王』ハヤカワ文庫

麻耶雄嵩 『螢』 幻冬舎文庫
道尾秀介 『背の眼 上下』 幻冬舎文庫

島田荘司 『龍臥亭幻想 上下』 光文社文庫

北山猛邦 『クロック城』殺人事件 講談社文庫

菅浩江 プリズムの瞳 東京創元社
海堂尊 夢見る黄金地球儀 東京創元社ミステリ・フロンティア


11月

森博嗣 探偵伯爵と僕 講談社ノベルス
打海文三 裸者と裸者 上下(角川文庫)
山本弘 MM9 東京創元社
小路幸也 HEARTBLUES 東京創元社ミステリ・フロンティア
マイナス・ゼロ『マイナス・ゼロ』 広瀬 正 著

↑クリックして拡大

評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(満点)

紹介
あの過去を消し去りたい、未来を覗いてみたいという衝動は誰にでもある。
しかし、必ず矛盾が生まれてくる。過去を変えた場合、現実も変わってしまうのか?
自分の親を過去で殺した場合、自分はどうなるのか?そういった問題点を解決してこそ
時を越える小説の醍醐味であると思う。

この小説はよくハインラインの『夏への扉』と比較される。
確かにラブロマンスと時空を移動する部分は同じだが、読んで見ると印象は変わる。
「マイナス・ゼロ」は過去を見つめる作品でもある。過去へ行ってしまった主人公は
自分がいた現実へ戻ることを考えながらも過去の時代を決して疎かにしない。
だからこそ、奇跡ともいえる結末を迎えることができたのだと思う。どうしても、過去へ
移動した場合、自分がいた世界へ戻りたいと思いがちだが、過去は別世界ではない。
過去は連続して今の現実へ続き、そして未来へ広がっているのである。

読者は主人公とともに、戦時中の時代、そして二次大戦直前の日本へと誘われる。
最近『Always 三丁目の夕日』という映画などで哀愁漂う昭和の風景が話題になったが、
この作品を読めば同じような感覚に陥るだろう。
作者は特に、タイムマシンの構造について言及していないが、これでもかという風に過去の
時代の描写を事細かに書いている。まさに目の前にあるかのように写ることだろう。

構成を見れば、個人的には「夏への扉」よりも複雑かつ洗練されていると思う。
最後の結末で物語が一つに収斂していく様は見事だ。

悲しいことが隠れた名作ということである。隠れる必要はないだろう。

今話題になっている「涼宮ハルヒの憂鬱」「時をかける少女」などを好きな人にもお奨めしたい。萌えはないかもしれないが、時空転移の面白さを味わえると思う。

しかし!絶版なのだ!

僕の持っているハインラインの『夏への扉』が46刷にもなっているのに、
同じくらい面白いこの本は絶版というのはどういうことか…

これを読みたいと思った人は図書館で借りることをお奨めする。
田舎に住んでいる僕の町の図書館でさえ、あったのでみんなのところにもあるだろう。

さらに図書館は同じ県内の図書館から借りてくるサービスもやっているはず。
自分のところに無ければこのサービスも活用してみてほしい。

僕が借りたのは集英社文庫から出されたものではなく、河出書房新社から出たハードカバーである。個人的にジャケットが気に入っている。集英社文庫のほうも嫌いではないが。

あるいはブックオフの100円コーナーで地道に探すという方法がある。

そして、願わくば、復刊ドットコムに投票して欲しい!!

こちら→http://www.fukkan.com/fk/index.html

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