G.T.T.B.A.M.

Aarchive 『2008年05』

higashigawa『交換殺人には向かない夜』 東川 篤哉 著

光文社カッパノベルス 880円


評価 ☆☆☆☆☆☆☆★★★(星7個)

あらすじ
 浮気調査を依頼され、使用人を装って山奥の邸に潜入した私立探偵・鵜飼杜夫。ガールフレンドに誘われ、彼女の友人が持つ山荘を訪れた探偵の弟子・戸村流平。寂れた商店街の通りで起こった女性の刺殺事件の捜査をおこなう刑事たち。
 別々の場所で、全く無関係に夜を過ごしているはずだった彼らの周囲で、交換殺人はいかにして実行されようとしていたのか?飄々と、切れ味鋭い傑作本格推理。

紹介
ユーモアミステリという少し変わったミステリーを書く作家。シリーズとしては4作目の作品です。
なぜ、4作目かというと、この4作目がミステリ的にも優れているし、ギャグの掛け合いも秀逸であるからだ。
メフィスト賞の石崎幸二氏を好きな人にもお薦めしたい作家です。タイトルどおり、交換殺人が行われるのですが、その交換殺人はどうやって行われたのか?全く無関係の殺人を繋げる糸は何なのかという点もうまく描いている作品です。
交換殺人だけでなく、他にも小説ならではのミステリの手法が使われているのが面白い。
さらに、少しとぼけた会話や演劇でもしているかのように推理を解き明かす場面にはクスリとしてしまうでしょう。

このユーモア溢れる会話の中にも伏線がある点が憎い。くだらないなぁなんと思っていると伏線を張られていることに気がつかず、やられてしまうでしょう。
シリーズものであるだけにキャラクターもしっかり立っているので、気に入ったら過去の作品も面白いと思います。特に2作目3作目なんかも面白いですよ。

人を殺すミステリというとつい動機や人間感情のもつれ合いなんかが主題として使われてたりしますが、フィクションとしてユーモア溢れるミステリも面白いんじゃないでしょうか?
緊張感もないしテンポも速いが、300ページ以内でこのミステリの密度はすごい。

気軽に読めるので良かったらどうぞ。
7月刊行予定 百物語 (仮) 浪人左門あやかし指南 【著:輪渡颯介】

二作目が出るみたいですね。
期待しときましょう。

第61回日本推理作家協会賞(日本推理作家協会主催)が16日決まった。
「長編および連作短編集部門」は今野敏さんの「果断 隠蔽(いんぺい)捜査2」(新潮社)で、山本周五郎賞とのダブル受賞。
「評論その他の部門」は最相葉月さんの「星新一 一○○一話をつくった人」(新潮社)で、
大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞、日本SF大賞に次ぐ四つ目の受賞となった。
<短編部門>長岡弘樹さんの「傍聞(かたえぎ)き」(「小説推理」1月号)
<評論その他の部門>紀田順一郎さんの「幻想と怪奇の時代」(松籟社)

ソース

星新一のノンフィクションは強いな〜。もう受賞4つ目ですって!

以下6月気になる新刊

講談社ノベルス
高里椎奈 天上の羊 砂糖菓子の迷児 薬屋探偵怪奇譚2
蒼井上鷹 まだ殺してやらない
宮部みゆき ICO 霧の城 講談社ノベルス

双葉文庫
新堂冬樹 僕の行く道
中島らも ガダラの豚 上下

講談社文庫
化野燐 白澤 人工憑霊蠱猫
西尾維新 クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識
町田康 浄土
舞城王太郎 好き好き大好き超愛してる。

日明恩 ギフト 双葉社
鳥飼否宇 爆発的 七つの箱の死 双葉社

徳間書店
石持浅海 耳をふさいで夜を走る

角川文庫
打海文三 愚者と愚者 上下
雫井脩介 クローズド・ノート
京極夏彦 対談集 妖怪大談義
坂口安吾 明治開化 安吾捕物帖

森博嗣 スカイ・イクリプス 中央公論新社

集英社文庫
石田衣良 愛がいない部屋
古処誠二 七月七日

今野敏 潜入捜査 実業之日本社ジョイ・ノベルス
有川浩 ラブコメ今昔 角川書店

新潮文庫
重松清 きみの友だち
唯川恵 恋せども、愛せども
湯本香樹実 春のオルガン

三津田信三 死相学探偵1 三十三の呪 角川ホラー文庫
大崎梢 平台がおまちかね 創元クライム・クラブ
近藤史恵 錆びないスキレット 創元クライム・クラブ
竹内真 シチュエーションパズルの攻防 珊瑚朗先生無頼控 創元クライム・クラブ
吉永南央 誘(いざな)う森 東京創元社ミステリ・フロンティア
樋口有介 木野塚佐平の挑戦だ 創元推理文庫
結城昌治 ひげのある男たち 創元推理文庫
S・J・ローザン 冬そして夜 創元推理文庫
田中芳樹 銀河英雄伝説9 回天篇 創元SF文庫
折原一 クラスルーム 理論社ミステリーYA!
横山秀夫 64(ロクヨン) 文藝春秋
笹本稜平 還るべき場所 文藝春秋
summer『夏の涯ての島』 イアン・R・マクラウド 著
早川書房 2310円


評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆★★(評価8個)

内容
ときは1940年、ヨーロッパ。さきの世界大戦ではドイツが勝利し、フランスはドイツと平和協調路線をとった。これに対し、ファシズムと軍事拡張路線を推進するイギリスは、国際社会で孤立していた。国内では、好戦的なムードと力のある指導者への崇拝の機運が満ちている一方、政府の政策によってユダヤ人や同性愛者は屈辱的な差別を受けていた。病に冒された老境の歴史学者グリフは、この国のカリスマ的指導者ジョン・アーサーの旧知として恩恵に与っていたが、こうした現状に疑問を抱いてもいた。なぜなら、全体主義で牽引力を発揮するジョン・アーサーこそ、かつて若く輝ける日々にかれが愛した男であったからだ??架空の時代を背景に、繰り返される歴史上の愚行と個人の無力を鮮やかに見せる表題作(世界幻想文学大賞・サイドワイズ賞受賞)。
アーシュラ・K・ル・グィンの未来史を思わせる、マクラウド独自の異星文明世界を舞台に、女性ばかりの惑星でめばえた少女の初恋と成長を描く「息吹き苔」(アシモフ読者賞受賞)。
人類がもう宇宙に興味を失った近未来、最後のSETI研究者として地球外からの交信に耳を澄ませる男がいた……地球の、異邦人の、そしてひとりの人間の孤独を多層的に示した傑作「ドレイクの方程式に新しい光を」。
SF的発送に端を発し、さまざまな“変化”に直面した人間の心の機微を、詩情に満ちた物語に結実させた選りすぐりの傑作七篇を収録する、日本オリジナル短篇集。

紹介
あまり海外作品を読めていない自分ですが、ふと幻想文学を読みたいと思い、丁度今年の1月に出たので図書館で借りてみた。(翻訳ものは高いなぁ。刷る数が少ないからか。)

世界幻想文学大賞も受賞している珠玉の短編集ですが、調べたらびっくり。
実はあの村上春樹氏の『海辺のカフカ』も2006年に受賞されています。全然日本でニュースにならなかった気がするんだが…。結構すごいことだと思うんだけどなぁ。

で、このマクラウド氏の短編集は幻想SFというジャンルに入る。
SFという設定を使い幻想的な文体で、人間の成長や愛、家族、老いというものをものの見事に表現している。たぶん本屋さんで少しパラ読みするだけで幻想小説だなとわかる文体です。SF好きにもお薦め。以下少し気になったものを紹介

「わが家のサッカーボール」
 収録作品中、唯一明るくポップな作品。登場人物が全員、色んな動物に変身できるんだが、その変身する様がコメディタッチで面白い。でもひょんなことからお母さんがある動物になってしまい戻れなくなる。その理由とは…?タイトルのサッカーボールも物置の隅に置いてある古ぼけたやつのことです。
そこに家族の絆がくっきりと入ってくるのが良い。

「チョップ・ガール」
 戦闘機で戦争に繰り出す飛行場で働く少女の物語。その少女と付き合うと帰ってこれないという噂が立つ。その少女の恋と常に死と隣り合わせにある兵士の物語。飛行場での雰囲気と少女の語り口がとても退廃的で淀んだ雰囲気がある。森博嗣氏の『スカイ・クロラ』シリーズが好きな人にお薦めかも。

「息吹き苔」
 飛浩隆氏のグラン・ヴァカンスのような異世界の物語。その世界では全員が女性であり、一人の女性の恋愛を描く青春ファンタジー。これが一番幻想的な世界でとても面白かった。自分の貧困な語彙では説明できないんだけど、言葉一つ一つで描かれる世界がとても色鮮やかで素敵だった。という単なる感想しか言えない…

表題作はイギリスの改変歴史ものなんだが、これは読者としての自分が駄目だった。たぶんとても面白い小説なんだろうけど、使われている描写に慣れなくて楽しめなかった。もっと海外翻訳を読めば楽しめるんだろうけど。読みなれている方には面白いものだと思う。

うまく、紹介できなかったが、とても文体がしっかりしているし、SFだからといって敬遠するものではないので良かったら読んでみてほしい。翻訳者の方の力量も申し分ないと思うので。

watari掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南 輪渡 颯介 著

講談社ノベルス 840円

評価 ☆☆☆☆☆☆★★★★(星6個)

あらすじ
第38回メフィスト賞受賞作!
本格時代小説と怪談ミステリの美しき融合!

城下の掘割で若い女の幽霊を見たという普請方の男が、まもなく病で死んだ。女の姿を見た者は必ず死ぬという噂が囁かれる折、お家騒動が持ち上がり家老が闇討ちされた。怖がりで純情な甚十郎と酒を怪談を愛する浪人・平松左門が、闇に溶け込んだ真実を暴く痛快時代活劇!

紹介
懲りずにまたメフィスト賞に手を出してしまいました。
よくもわるくも癖のある作品が多いなか、これは意外でした。まともな時代劇ミステリとなっております。本当にメフィスト賞なのかというぐらい。(さすがに失礼か…)

キャラクターの造形もしっかりしているし、話のテンポもうまい。
さらに江戸時代の描写もうまくされている。
ミステリという点だけで言えば、少し小粒な気がするがやはり時代劇というだけで推理するほうも変わってくるので面白い。読み終わってみればこの少ない分量でよく表現できたなぁと関心。

畠中恵氏のしゃばけシリーズなんか好きな人にお薦めしてもいいかも。

少し残念なのが、キャラクターをすべて読者に見せてしまった気がする。
今後、シリーズ化するのかわからないが、してほしい反面、どう繋げて引っ張っていくのかが心配だなぁ。

でもメフィスト賞は三冊までは出版が約束されるので期待したい。
いや、本当に地雷本じゃないです。薄いし読みやすいしお薦めです。

追記
講談社ノベルス 7月刊行予定 百物語 (仮) 浪人左門あやかし指南 【著:輪渡颯介】

来月出る野生時代(角川書店)という雑誌は米澤穂信先生の大特集です。

古典部の新作短編も載るようなので要チェックやで!!

んで、その米澤氏の作品もノミネートしていた今年の本格ミステリ大賞は有栖川有栖氏の「女王国の城」に決定!!

正直、ミステリ的には三津田信三先生の首無だと思っていたんだけど、やはり学生アリスシリーズは人気があるということか。というかどういう基準で選考されてるんだろう…

まぁ、なんにせよおめでたいことです。ファンの方は16年も新作を待っていたんですからね!

こうなると麻耶氏の新作が恐いな…。あと十年ぐらいかかったりして。

そういえば、出ないといえば、小野不由美主上の十二国記シリーズ。
今年の新潮社から出ている雑誌yomyomに新作短編が掲載されてますよ!!
まぁ、過去の話なんでそんなに展開していくわけではないんですが、外伝です。
長編も出ないかな〜。wikiによると600万部も売れているみたい。小説でこの部数はすごいな!!

ついでに来月に打海氏の「愚者と愚者」の文庫が発売します!!

まだ三年経っていないにも関わらず出ます!!要チェックやで!!

それではまた。

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