『マイナス・ゼロ』 広瀬 正 著2007-10-08(Mon)
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評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(満点)
紹介
あの過去を消し去りたい、未来を覗いてみたいという衝動は誰にでもある。
しかし、必ず矛盾が生まれてくる。過去を変えた場合、現実も変わってしまうのか?
自分の親を過去で殺した場合、自分はどうなるのか?そういった問題点を解決してこそ
時を越える小説の醍醐味であると思う。
この小説はよくハインラインの『夏への扉』と比較される。
確かにラブロマンスと時空を移動する部分は同じだが、読んで見ると印象は変わる。
「マイナス・ゼロ」は過去を見つめる作品でもある。過去へ行ってしまった主人公は
自分がいた現実へ戻ることを考えながらも過去の時代を決して疎かにしない。
だからこそ、奇跡ともいえる結末を迎えることができたのだと思う。どうしても、過去へ
移動した場合、自分がいた世界へ戻りたいと思いがちだが、過去は別世界ではない。
過去は連続して今の現実へ続き、そして未来へ広がっているのである。
読者は主人公とともに、戦時中の時代、そして二次大戦直前の日本へと誘われる。
最近『Always 三丁目の夕日』という映画などで哀愁漂う昭和の風景が話題になったが、
この作品を読めば同じような感覚に陥るだろう。
作者は特に、タイムマシンの構造について言及していないが、これでもかという風に過去の
時代の描写を事細かに書いている。まさに目の前にあるかのように写ることだろう。
構成を見れば、個人的には「夏への扉」よりも複雑かつ洗練されていると思う。
最後の結末で物語が一つに収斂していく様は見事だ。
悲しいことが隠れた名作ということである。隠れる必要はないだろう。
今話題になっている「涼宮ハルヒの憂鬱」「時をかける少女」などを好きな人にもお奨めしたい。萌えはないかもしれないが、時空転移の面白さを味わえると思う。
しかし!絶版なのだ!
僕の持っているハインラインの『夏への扉』が46刷にもなっているのに、
同じくらい面白いこの本は絶版というのはどういうことか…
これを読みたいと思った人は図書館で借りることをお奨めする。
田舎に住んでいる僕の町の図書館でさえ、あったのでみんなのところにもあるだろう。
さらに図書館は同じ県内の図書館から借りてくるサービスもやっているはず。
自分のところに無ければこのサービスも活用してみてほしい。
僕が借りたのは集英社文庫から出されたものではなく、河出書房新社から出たハードカバーである。個人的にジャケットが気に入っている。集英社文庫のほうも嫌いではないが。
あるいはブックオフの100円コーナーで地道に探すという方法がある。
そして、願わくば、復刊ドットコムに投票して欲しい!!
こちら→http://www.fukkan.com/fk/index.html
どこが復刊してくれそうか、少し考えてみた。
版権がどうなっているかわからないが、有力候補は角川書店か早川書房か…
こっそり、ハルヒの新刊の横にでも置いたら売れるんじゃないか?
あるいは、長門が薦めるこの一冊というコーナーでも作って紹介したらいい
長門『とてもユニーク…』
なんか言ったりさせて。
金儲けでもなんでもいいから出して欲しいね。どんな動機で出そうと名作は変わらない。
現に僕が生まれる十年前に出された本だけど今も立派に輝いている。
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