『ハルビン・カフェ』 打海 文三 著2008-04-16(Wed)
『ハルビン・カフェ』 打海 文三 著評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(星9個)
角川文庫 860円
あらすじ
福井県の西端にある、海市(=蜃気楼の意味)という、いささかロマンチックな名前を与えられた新興の港湾都市。凶悪犯罪の多発により、警官の殉職率が東京をはるかに凌駕するレベルに達したとき、それが熱病を呼んだ。
市警察の下級警官の一部が地下組織をつくり、マフィアに報復テロルを宣言して、法の番人自らが法秩序を脅威にさらしたのである。―彼らは、『P』と呼ばれた。打海文三が真価を発揮した最高傑作渾身の書き下ろし1000枚。
紹介
文字通り、最高傑作といって良い作品です。もしかしたら「愚者と愚者」のシリーズがそうなったかもしれないが、もう出ない以上、これが完成された打海文三氏の名作である。
そして、打海氏を読もうかなと思っている人にまずは手にとってもらいたい作品です。600ページという厚さを体験したことがある人なら、是非読んでもらいたい。
細かく、章は別れ、その一つ一つが様々なキャラクターによってとても断片的に語られていく。
その多視点に少しとまどう人もいるかもしれないが、嫌でも冷たくて美しく堅い文体に読ませられるだろう。そして、後半になるにつれて、断片的な内容が集まり、形を見出してくる。そうなると読者は最後まで突っ走ること請け合いだ。
様々な視点で語る人物一人一人もしっかりとキャラクターが形成され、時には警察小説にあるような正義の裏にある人間的な醜さがあり、時には男性特有の頑固な惨めさや女性の醜さが表現されている。それをカメラから覗くように読者は物語を読んでいく。
正直、読者を選ぶ作品かもしれない。というか打海作品全部に言えることかも。
ジャンル的な面白さではないのだ。だからこれをハードボイルドというにはいささか広義的すぎると
思う。大沢在昌氏や新堂冬樹氏のようなハードボイルドとは明らかに違う。
だから文庫の大森望氏の解説はピンとこなかった。
なんなのかと言われれば「打海文三の面白さが味わえる小説」としか僕はいえない。
軽い作品ではない。アクションや感動的なものでもない。
でも、少しも揺るがない作品ではある。ぶれてないのだ。しっかりと一つになっている。
だからこの小説の面白さは一つだけだし、それが打海氏の小説全部に繋がる面白さなのだ。
正直、過去の作品はぶれているように感じるものが多かった。一体この人は何を書きたいのか?何を表現しているのか?と思うのもあった。しかし、思い返せば、ジャンル的なものではなく、ミステリーであれ、ハードボイルドであれ、SFであれ、そこには打海氏らしい面白さが曇ることなく一際目立っていた。
言い過ぎているという意見もあるかもしれない。しかし、僕が読んできた打海氏の小説に対して、感じたことなのである。合わない人はどれも合わないかも。しかし、合う人はどれも楽しめるだろう。
対象読者がどこなのかもわからない。ジャンルレスな面白さだが、特異なのでお奨めする文句がうまく思いつかない。でも打海氏を読んでみようと思う方にはこの作品をぶつけたい。
そして、その魅力を最大限に味わえる作品がこの『ハルビン・カフェ』だ!
トラックバック
この記事のTrackback-URL
http://buchbuch.blog32.fc2.com/tb.php/132-27ff8d8d



コメントの投稿