『裸者と裸者』(上・下) 打海 文三 著2007-01-18(Thu)

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裸者 戦争 
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『裸者と裸者 ―孤児部隊の世界永久戦争―』(上巻)
『裸者と裸者 ―邪悪な許しがたい異端の―』(下巻)
著者 打海 文三



評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆(星10個中9個)


あらすじ
 物語の舞台は、今よりも少し未来の日本。世界が金融システムの崩壊や経済恐慌などによって、崩壊し始めた。中国が政権戦争を始め、ロシアでは油田を利用して成しあがった独立国の出現。大陸は崩壊し、あぶれた外国人が平和な日本に殺到する。そして、その暴動や混乱に応じて軍事テロが勃発。首都東京は制圧された。ここから日本での戦争がおき始める。
 主人公は当時、7歳だった佐々木海人。父親を誤爆ミサイルで失った少年は幼いながらも、利発な妹の恵と二歳の隆を守るために生きていく。目的のために手段は選ばない。兵士として生きながらも、少年の純粋さを持ったまま、海人は家族を守るために、戦争へ身を投じていく。

上巻のあらすじです。

書評
正直、戦争モノは欝になるので嫌だったんですが、面白そうだったので借りてみました。

 上巻は、予想通りという展開でした。近未来といっても、武器や戦う方法なんかは、素人目では今と変わりなく思います。海人の境遇も順当に、壮絶な人生といったところでしょうか。家族を養うために、殺人を犯し、兵隊となって戦争へ赴く。
 唯一特色なのが、学がないということです。学校へ行けずに育ったために、話す言葉なども幼いものです。学がないながらも、必死に情勢や状況を考えて、賢く動くという一見矛盾した要素を持っています。孤児部隊の特色といっていいでしょう。

上巻だけでも序章といった感触でした。これだけではわざわざ紹介するに至らなかったのですが、下巻では、一見頭の狂った様に思える双子の姉妹が主人公になります。彼女達は海人と知り合っていますが、独自に、女性だけのマフィアであるパンプキン・ガールズを結成します。

 下巻の良い所は、女性を主人公としたところです。どうしても戦争の舞台だと男性主人公になってしまいがちですが、下巻によってとてもバランスの良い物語になっている。上巻を読んだとき、これは女性はどのように思うのだろうか?と考えました。上巻に出てくる女性は、兵隊にレイプされるか、娼婦か。あとは男らしく世の中を渡っていく女性という印象しかなかった。まるで昔の戦争と一緒のような感じです。
しかし、下巻では、戦争によるマイノリティがたくさん出てきます。代表的なものが女性でしょう。他にも外国人差別やセクシャルマイノリティの問題が出てきます。そして、それらの組織がパンプキン・ガールズと同盟し、極めて排他的で男尊女卑の主義を抱えるモーセと戦うことになる。マイノリティが結託し、マジョリティに挑むという点がとてもひきつけられました。もちろん、戦争はそれだけではなく、ビジネスの事情もあるし、腐ったプライドやアメリカの介入などの色々な思惑が入りますが。

想像ですが、日本の内戦になったとき、この排他的で男尊女卑な主義は今の日本人男性の大部分だと思いました。僕も少し共感してしまうでしょう。(2009/3/14日変更しました。)
モーセの指導者がこのようなことを言っていました。

この国(日本)は非常に人を動かしやすい。

単一民族を意識して、昔の男性優位意識がある国はとても単純にはまってしまうのかも。

いずれにせよ、この上下巻でとても多くの読者向けとなっております。女性が上下巻を読むとまた男性である僕とは違った印象を受けるでしょう。下巻を読むだけでも価値があると思います。

さらに言えば、あまり人物の心理描写がないので比較的読者に自由があります。戦争モノにありがちな悲劇や涙の感動なんかは無理矢理押し付けられたりしていません。
読者がどう読むかで大分変わってくる作品だと思います。

ちなみに、この物語は次の『愚者と愚者』に続きます。そして、さらにまだ続くようです。たぶん、またタイトルは「ナンジャナンジャ」になるんでしょう。
この『裸者と裸者』は物語の序章と第一章と理解してもよさそうです。

壮大でとても面白かったです。今後も楽しみ!
良かったらどうぞ。


この本は図書館で借りたわけですが…
次の『愚者と愚者』は買いたいと思っています。
今はまだ出版社にも著者にも貢献はしていませんが、
いずれは買って貢献することになるということです。

やっぱり内容が面白ければ、売れると思いました。
まぁ、この売れるっていうのはビジネスでいう売れるという
わけではなく、単純に売れるということです。

ビジネス的な売れる(何万部増刷)という次元になると
やっぱり、マジョリティの需要を掴むしかないんだなと思います。

ただ、部数が少ないからといって面白くないというわけではないと
最近絶版した本を読んでいて思いました。
そういう意味ではあのブック●フなんかも最高に良い出会いを演出
しているんだな〜。
絶版に出会えることが多いし、何よりも100円の良き出会いが凄い
わけで。貧乏学生にはぴったりです。

Fc2blog - ジャンル:小説・文学 » テーマ:読書

Comments(4) | Trackback(1) | 打海 文三

Comment

裸者と裸者の書評を探してたらココをみつけました。
コメントの中で、今の日本の男尊女卑という部分と小説を比べている部分はちょっとわからなかったです。

とはいっても私は外国はアメリカしか知らないので、なんとも言えないですが、アメリカと比べるなら日本の方が差別がない国だと思います。

著者の哲学の中で学生運動的な臭いがあって、それはあまり好きじゃないけど、話はとても面白くて上下巻あっという間に読みました。

中国人の文化大革命直後を経験した女性と話をしたことがありますが、この小説を読んでいてそれを思い出しました。

個人的には上巻が好きです。
もっと知られても良い小説と思いました。

2009-03-03 21:00 | URL | mm_morita_mm [ 編集]

はじめまして

はじめまして。mm_morita_mmさん。
だいぶ返信がおくれてしまいました。すみません。

> 裸者と裸者の書評を探してたらココをみつけました。
> コメントの中で、今の日本の男尊女卑という部分と小説を比べている部分はちょっとわからなかったです。
>
> とはいっても私は外国はアメリカしか知らないので、なんとも言えないですが、アメリカと比べるなら日本の方が差別がない国だと思います。

わかりにくい感想ですみません。また、自分の見識が狭いにもかかわらず日本の男尊女卑を語るのは傲慢でした。これは私個人の女性に対する偏見ですね。
自分が内戦というものを考えたときに、女性に対してモーセのような偏見を少なからず持ってしまうと思った次第です。
感想や意見を書いていただいて、感謝しております。
少し、記事を訂正しておきました。

> 著者の哲学の中で学生運動的な臭いがあって、それはあまり好きじゃないけど、話はとても面白くて上下巻あっという間に読みました。
>
> 中国人の文化大革命直後を経験した女性と話をしたことがありますが、この小説を読んでいてそれを思い出しました。
>
どんな話だったのでしょうか。僕にはわかりませんが、少し気になります。僕もよく祖母から戦時中の話を聞くことがあります。

> 個人的には上巻が好きです。
> もっと知られても良い小説と思いました。

残念ながら、未完で終わってしまいましたが、もっと評価されていいものだと思いますね。最近、本を読み始めた人に貸したところ、とても面白かったという返事をもらいました。地道に広めていきたいと思ってます。

貴重なコメントに返信するのが遅くなってしまいましたが、とても参考になるコメントありがとうございました。
また、きてくれるとうれしいですね。

2009-03-14 15:00 | URL | Rachels(レイチェル) [ 編集]

文化大革命

中国人女性と話したのは6年ほど前の話です
これは、文化大革命について質問ではなくて、彼女の旦那との出会いについて話をした際のふとした流れで出た話です。」
そのやりとりの中でとても印象的だった言葉だったので良く覚えています。その他の文化大革命についての具体的な話は聞けませんだした。
(というか聞くのを遠慮しました)
それはこういう言葉でした。
「日本の女性を見ると女性らしさを感じる、私の頃は男女平等であった為、そういう態度やおしゃれをする事がまったくできないし、しようとすら感じなかった。だから日本女性のそういう部分をみると羨ましいというか、複雑な気持ちになる。今の中国の女性はそういう訳ではないけど、当時はそうだった。当時はすべての女性が男性的だったよ。」
というものです。

そして、日本でそれを目のあたりにするが、自分が女性らしくありたいとか、あまり思わないし(時々、羨望というか複雑な気持ちで眺めてはいた)、自身がそうなる事に抵抗感があったというものでした。

また 女性らしいのが良いとか悪いとかの視点でなくて、違うんだなぁというニュアンスでの語りだと私は感じています。(個人的になにかしらの喪失感みたいのを感じました…たぶんそれは女性らしさというより文化大革命全般に関して思うことがあったのだと思います)

以上 参考になればよいですが、
色々な書評楽しみにしています。
では。

2009-03-15 20:16 | URL | mm_morita_mm [ 編集]

Re: 文化大革命

貴重なコメントありがとうございます。
またまた返信が遅れました。ごめんなさい。
> 中国人女性と話したのは6年ほど前の話です
> これは、文化大革命について質問ではなくて、彼女の旦那との出会いについて話をした際のふとした流れで出た話です。」
> そのやりとりの中でとても印象的だった言葉だったので良く覚えています。その他の文化大革命についての具体的な話は聞けませんだした。
> (というか聞くのを遠慮しました)
> それはこういう言葉でした。
> 「日本の女性を見ると女性らしさを感じる、私の頃は男女平等であった為、そういう態度やおしゃれをする事がまったくできないし、しようとすら感じなかった。だから日本女性のそういう部分をみると羨ましいというか、複雑な気持ちになる。今の中国の女性はそういう訳ではないけど、当時はそうだった。当時はすべての女性が男性的だったよ。」
> というものです。
>
> そして、日本でそれを目のあたりにするが、自分が女性らしくありたいとか、あまり思わないし(時々、羨望というか複雑な気持ちで眺めてはいた)、自身がそうなる事に抵抗感があったというものでした。
>
> また 女性らしいのが良いとか悪いとかの視点でなくて、違うんだなぁというニュアンスでの語りだと私は感じています。(個人的になにかしらの喪失感みたいのを感じました…たぶんそれは女性らしさというより文化大革命全般に関して思うことがあったのだと思います)


当時はすべての女性が男性的だったよ。という部分に僕も違うなぁという印象を受けました。確かに文化大革命に関しては少しタブーなところもあるので難しいところですね。
自分たちがいる社会の外を見るということがどんなものなのか、未熟者の僕にはまだわかりませんが、その経験はいろんな意味で大事なのかなと漠然と思いました。
本当に貴重なコメントです。ありがとうございます。

> 以上 参考になればよいですが、
> 色々な書評楽しみにしています。
> では。

ありがとうございます。
また、気が向いたら来てくださいね!

2009-03-29 20:12 | URL | Rachels(レイチェル) [ 編集]

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