『愚者と愚者』(上・下) 打海 文三2007-03-08(Thu)

gusya


『愚者と愚者』上―野蛮な飢えた神々の叛乱
『愚者と愚者』下―ジェンダー・ファッカー・シスターズ
著者 打海 文三

評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆(星八個)

あらすじ

『裸者と裸者』に続く、近未来SFの第二弾です。『裸者と裸者』のレビューはこちら
上巻は、前回と同じように、佐々木海人が主人公になります。いつの間にか大佐になった海人は、責任が大きくなっていく中で様々な壁にぶつかっていく。大佐としての責任と友情がせめぎあい、海人は苦悩していく。さらに軍隊の中で、性差別の問題が重大な障害となる。近未来の戦争時の中で、普遍的な愛情や友情が描かれる。

下巻は、前回同様、月田椿子が主人公になります。椿子は女だけの先頭集団パンプキンガールズを結成する。下巻では様々な性が矛盾と暴力を生み、戦争に利用され、あるいは戦争を作り出す。堅甲なまでの男根主義・レズビアン・トランスジェンダーが浮き彫りになる。
それぞれに悩みや正義を抱えながら、戦いあう。椿子はそれらをどう解釈し、飲み込んでいくのか!?

書評

上巻
佐々木海人視点で展開されていくんですが、相変わらず海人は少年の純朴で幼い部分と軍人としての冷徹さと厳しさという矛盾を抱えています。少年らしさは、海人と仲の良い人との交流で垣間見れるのですが、それが戦争時における一時の平和に見えて感慨深げになりました。
海人がぶつかる問題がとても痛切に書かれていて、一番印象的でした。

海人を知れば知るほど、戦時における一時の幸せと戦争が引き起こす友情や愛情への悲劇や残虐さが身に染みてきます。

下巻
こちらでは、壮絶なまでの性問題が溢れています。それが戦争に発展し、ぶつかり合っていく。読んでいて思うことは、どれもが正義であり、悪であるということ。正しいということが人によって違うんです。
そして、男の僕は男根主義に疑問を思いながらも納得してしまう自分もいます。戦争という舞台を通じて、性の葛藤が描かれるのでとても新鮮でしたね。

女性が戦争にどのように参加するのか?というのは大きな疑問だと思いませんか?軍人として戦うのか、軍隊には入らず支援をするのか、など女性にとって大きなテーマだと思います。そしてその女性と男性の衝突も大きなものでしょう。
興味がある方は是非どうぞ。なかなか考えさせられてしまうテーマだと思いますよ。

総合
総合的に評価すれば、前回の裸者とあまり代わり映えしないという点で二点引かせてもらいました。とても面白いのですが、新しいものがなかったという感じです。
ただ、裸者のテーマが愚者で、より成熟されているという点で素晴らしいものとなっています。とくに下巻は、裸者の下巻のテーマであった女性の立ち位置が、より鮮明になりそしてその立ち位置がぶつかり合っています。

この愚者から読んでも全然支障はないと思います。むしろ過去が気になって仕方がないかも。

次回作で終わりになるみたいです。
確かな情報かわかりませんが、タイトルは『ハシャとハシャ』となるみたい。覇者かな?


以下、ヒトリゴトです。




今回のブックデザインはどうなのかな?
読んだ感じでは合ってないような気がします。

表紙がふんわりしすぎている気がする。
内容はもっと鋭い感じなのに。
前のほうが僕は良かったな〜。あくまで個人的ですが。

バカみたいですが、戦争を扱ったものって、いつ誰がが死んでしまうのか気になって仕方がない。気に入ってるあのキャラだったらどうしようとか、ギリギリの緊張感がある。
幸せな描写部分でも、いきなりミサイルや軍隊が来て、絶望になるんじゃないかとか。
でも、戦時中だったら当たり前なのか、それは。

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