『天帝のはしたなき果実』 古野 まほろ2007-06-23(Sat)
『天帝のはしたなき果実』 古野 まほろ講談社ノベルス
あらすじ
90年代初頭の日本帝国。名門勁草館高校で、子爵令嬢・修野まりに託された数列の暗号を解いた奥平が斬首死体となって発見される。報復と解明を誓う古野まほろら吹奏楽部の面子の前で更なる犠牲者が! 青春ミステリ。
紹介
宇山日出臣氏が生前推していた作家です。
メフィスト賞を受賞しデビューとなったわけですが、読んでみると納得がいきました。
この作品をデビューさせるのはメフィスト賞しかないといった印象の作品です。過去、京極夏彦氏「ウブメの夏」や清涼院流水氏「コズミック」、または西尾維新氏「クビキリサイクル」そして舞城王太郎氏「煙か土か食い物」をデビューさせてきたメフィストならではといった感じです。
圧倒的な知識量と荘厳な文章で最後まで突っ走る小説。テーマとしては青春とミステリですね。
ルビがとても多く、ドイツ語や英語が様々なところに使われています。
また、日本の歴史が関係してくることもしばしば。
しかし、キャラクターが語る内容や音楽についての描写がすごすぎて、ついていけない読者もいるかも。
清涼院流水氏や京極夏彦氏が好きな方は是非どうぞ。ここからは少し批判的になるので。
小説というのはどうしても読者のレベル(優劣ではなく、単なる量の差)が関係してきます。
僕なんかはそれなりに読んでいるほうですが、真剣に読む読者ではない。つまらなければ飛ばすし、意識も違うほうに向かっていきます。
それを踏まえて紹介を。
この小説は僕からは少し遠すぎるという印象です。
最初の部分はともかく、最後の一章なんかは完全に意識が飛んでました。真相に何の魅力も感じなかった。京極氏は圧倒的な知識量を小説の中で表していますが、主題の謎がぶれることなく、読ませられる。
しかし、この小説は僕にとって、どこが中心なのかがわからなかった。
殺人事件なのか、その真相なのか、キャラの青春なのか。それとも音楽などの芸術についてなのか。
そして、残念なことに、僕にとってそのどれもが魅力的でなかったことだ。
原因はもしかしたらキャラクターにあるのかも。出てくる主要キャラ全員が同じレベルで会話する。誰一人として読者の立場がいない。
読者の言葉や疑問を代弁してくれるキャラが一人もいなかった。疎外感があり、だからキャラや話す内容に魅力を感じなかったといえる。
僕にとってこの小説は知人のウエディングケーキみたいなものだ。
とても綺麗な言葉やルビ・舞台設定などで飾られたケーキだけど、僕にとってはただ馬鹿でかいケーキで、部分部分をみれば普通のフルーツケーキである。問題はその味だが、スポンジも苺やメロンなどのフルーツ自体もまずかった。
京極氏の作品は身内もしくは僕のウエディングケーキだ。すべてに意味があり、どれもがおいしい。
ただ、古野氏がデビューしたことは良かったと思う。メフィストしか出来ないことだ。もしかしたら第二の京極氏や流水御大になるかもしれない。
それにこういう小説を好きな人も必ずいる。
知識もすごいし、筆力も魅力的かどうかは別として、しっかりしているからこれからに期待したい。
僕はこの小説を読んでよかった。後悔はしていない。
次回作はもう出ているが、姿勢は崩さずにもう少し読者層を広げた作品を期待しています。
最後に評価を。(最初に載せるとこれだけ見てしまう人がいると思うので今回は誤解のないように最後にしました)
ただ、単純につまらないだけだったらここで紹介しません。
意味のある低評価だと思ってください。
評価 ☆☆☆★★★★★★★(星3個)
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