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Category 『 打海 文三』

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『愚者と愚者』上―野蛮な飢えた神々の叛乱
『愚者と愚者』下―ジェンダー・ファッカー・シスターズ
著者 打海 文三

評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆(星八個)

あらすじ

『裸者と裸者』に続く、近未来SFの第二弾です。『裸者と裸者』のレビューはこちら
上巻は、前回と同じように、佐々木海人が主人公になります。いつの間にか大佐になった海人は、責任が大きくなっていく中で様々な壁にぶつかっていく。大佐としての責任と友情がせめぎあい、海人は苦悩していく。さらに軍隊の中で、性差別の問題が重大な障害となる。近未来の戦争時の中で、普遍的な愛情や友情が描かれる。

下巻は、前回同様、月田椿子が主人公になります。椿子は女だけの先頭集団パンプキンガールズを結成する。下巻では様々な性が矛盾と暴力を生み、戦争に利用され、あるいは戦争を作り出す。堅甲なまでの男根主義・レズビアン・トランスジェンダーが浮き彫りになる。
それぞれに悩みや正義を抱えながら、戦いあう。椿子はそれらをどう解釈し、飲み込んでいくのか!?

書評

上巻
佐々木海人視点で展開されていくんですが、相変わらず海人は少年の純朴で幼い部分と軍人としての冷徹さと厳しさという矛盾を抱えています。少年らしさは、海人と仲の良い人との交流で垣間見れるのですが、それが戦争時における一時の平和に見えて感慨深げになりました。
海人がぶつかる問題がとても痛切に書かれていて、一番印象的でした。

海人を知れば知るほど、戦時における一時の幸せと戦争が引き起こす友情や愛情への悲劇や残虐さが身に染みてきます。

下巻
こちらでは、壮絶なまでの性問題が溢れています。それが戦争に発展し、ぶつかり合っていく。読んでいて思うことは、どれもが正義であり、悪であるということ。正しいということが人によって違うんです。
そして、男の僕は男根主義に疑問を思いながらも納得してしまう自分もいます。戦争という舞台を通じて、性の葛藤が描かれるのでとても新鮮でしたね。

女性が戦争にどのように参加するのか?というのは大きな疑問だと思いませんか?軍人として戦うのか、軍隊には入らず支援をするのか、など女性にとって大きなテーマだと思います。そしてその女性と男性の衝突も大きなものでしょう。
興味がある方は是非どうぞ。なかなか考えさせられてしまうテーマだと思いますよ。

総合
総合的に評価すれば、前回の裸者とあまり代わり映えしないという点で二点引かせてもらいました。とても面白いのですが、新しいものがなかったという感じです。
ただ、裸者のテーマが愚者で、より成熟されているという点で素晴らしいものとなっています。とくに下巻は、裸者の下巻のテーマであった女性の立ち位置が、より鮮明になりそしてその立ち位置がぶつかり合っています。

この愚者から読んでも全然支障はないと思います。むしろ過去が気になって仕方がないかも。

次回作で終わりになるみたいです。
確かな情報かわかりませんが、タイトルは『ハシャとハシャ』となるみたい。覇者かな?


以下、ヒトリゴトです。




utiumi-rasyarasya.jpg

『裸者と裸者 ―孤児部隊の世界永久戦争―』(上巻)
『裸者と裸者 ―邪悪な許しがたい異端の―』(下巻)
著者 打海 文三



評価 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆(星10個中9個)


あらすじ
 物語の舞台は、今よりも少し未来の日本。世界が金融システムの崩壊や経済恐慌などによって、崩壊し始めた。中国が政権戦争を始め、ロシアでは油田を利用して成しあがった独立国の出現。大陸は崩壊し、あぶれた外国人が平和な日本に殺到する。そして、その暴動や混乱に応じて軍事テロが勃発。首都東京は制圧された。ここから日本での戦争がおき始める。
 主人公は当時、7歳だった佐々木海人。父親を誤爆ミサイルで失った少年は幼いながらも、利発な妹の恵と二歳の隆を守るために生きていく。目的のために手段は選ばない。兵士として生きながらも、少年の純粋さを持ったまま、海人は家族を守るために、戦争へ身を投じていく。

上巻のあらすじです。

書評
正直、戦争モノは欝になるので嫌だったんですが、面白そうだったので借りてみました。

 上巻は、予想通りという展開でした。近未来といっても、武器や戦う方法なんかは、素人目では今と変わりなく思います。海人の境遇も順当に、壮絶な人生といったところでしょうか。家族を養うために、殺人を犯し、兵隊となって戦争へ赴く。
 唯一特色なのが、学がないということです。学校へ行けずに育ったために、話す言葉なども幼いものです。学がないながらも、必死に情勢や状況を考えて、賢く動くという一見矛盾した要素を持っています。孤児部隊の特色といっていいでしょう。

上巻だけでも序章といった感触でした。これだけではわざわざ紹介するに至らなかったのですが、下巻では、一見頭の狂った様に思える双子の姉妹が主人公になります。彼女達は海人と知り合っていますが、独自に、女性だけのマフィアであるパンプキン・ガールズを結成します。

 下巻の良い所は、女性を主人公としたところです。どうしても戦争の舞台だと男性主人公になってしまいがちですが、下巻によってとてもバランスの良い物語になっている。上巻を読んだとき、これは女性はどのように思うのだろうか?と考えました。上巻に出てくる女性は、兵隊にレイプされるか、娼婦か。あとは男らしく世の中を渡っていく女性という印象しかなかった。まるで昔の戦争と一緒のような感じです。
しかし、下巻では、戦争によるマイノリティがたくさん出てきます。代表的なものが女性でしょう。他にも外国人差別やセクシャルマイノリティの問題が出てきます。そして、それらの組織がパンプキン・ガールズと同盟し、極めて排他的で男尊女卑の主義を抱えるモーセと戦うことになる。マイノリティが結託し、マジョリティに挑むという点がとてもひきつけられました。もちろん、戦争はそれだけではなく、ビジネスの事情もあるし、腐ったプライドやアメリカの介入などの色々な思惑が入りますが。

想像ですが、この排他的で男尊女卑な主義は今の日本人男性の大部分だと思いました。僕も含めて。モーセの指導者がこのようなことを言っていました。

この国(日本)は非常に人を動かしやすい。

単一民族を意識して、昔の男性優位意識がある国はとても単純にはまってしまうのかも。

いずれにせよ、この上下巻でとても多くの読者向けとなっております。女性が上下巻を読むとまた男性である僕とは違った印象を受けるでしょう。下巻を読むだけでも価値があると思います。

さらに言えば、あまり人物の心理描写がないので比較的読者に自由があります。戦争モノにありがちな悲劇や涙の感動なんかは無理矢理押し付けられたりしていません。
読者がどう読むかで大分変わってくる作品だと思います。

ちなみに、この物語は次の『愚者と愚者』に続きます。そして、さらにまだ続くようです。たぶん、またタイトルは「ナンジャナンジャ」になるんでしょう。
この『裸者と裸者』は物語の序章と第一章と理解してもよさそうです。

壮大でとても面白かったです。今後も楽しみ!
良かったらどうぞ。



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